クマによる被害が全国で相次ぐ中、静岡県でも多くの目撃情報が寄せられています。専門家は、クマが人里に来る状況が続けば、冬眠しなくなる可能性もあると指摘します。

全国で相次ぐクマの被害。2025年度の死者は12人に上ります。静岡県内では11月1日、イノシシとニホンジカの狩猟が解禁されました。

<静岡県猟友会 金澤俊二郎会長>
「最近ちょっと皆さん、クマで騒いでいますが、きょうもしかしてこの地域で遭遇するかもしれないので」

猟師たちが気にかけていたのは、やはりクマ。猟師たちも、過去に数回クマを見かけたことがあるそうです。

<清水猟友会 堀場富美雄さん(77)>
「僕の入った範囲では、クリやドングリが2024年の10分の1。非常に少ない。やっぱり怖い。木に登った後とかその爪の跡がすごい爪のながさも相当長いし」

静岡県内でも実際に、人里にクマが近付くケースも。

<大西晴季記者>
「富士宮市内房です。周囲を山に囲まれているこの地域では、10月後半からクマが複数回目撃されています」

県によると、この地域では10月だけで6件の目撃情報がありました。

<大西晴季記者>
「クマの目撃情報を受け、富士宮市は箱罠を設置しています。そして、その横の柿の木は、クマ対策としてほとんどの実が収穫されています」

10月27日には別の箱罠で体重推定150kgのツキノワグマ1頭が捕獲・駆除されました。駆除の翌日の10月28日には、小学校にも。

<内房小学校 村松由里香校長>
「ちょうどこの辺りでしょうか。なんとなく名残があるような感じがある。この辺りをずっとあちらの方に歩いていくような足跡があった」

10センチ以上の長さがあるクマの足跡。発見当初は爪の鋭さもわかったといいます。

学校は鈴の着用や登下校時の保護者の送り迎えを呼びかけ、1階を常に施錠してクマの侵入を防いだり、外での活動を休止したりして児童がクマに襲われないよう対策をしています。

<村松校長>
「全ての教育活動をストップしてしまうと何もできなくなってしまうので、関係機関と連携していきながら、1番良い活動の進め方というのをその都度判断して、続けていくということが大事かなと」

山形県では10月29日、体長1メートルのどのクマが学校の扉に衝突して破壊しました。静岡でも同じようなことが起きるのでしょうか。

県のホームページでは、現在目撃情報をまとめたクマの出没マップを公開しています。

2025年度に入り県内各地で合わせて101件のクマとみられる目撃情報が寄せられています(10月31日時点、暫定値)。

<静岡県自然保護課 小澤真典班長>
「冬眠を控える秋に向けて活動が活発になってきたこともあって、10月になって急激に目撃数が増えたという形になります」

県は2024年、初めてツキノワグマの個体数を調査し、県内に500から600頭のクマがいると推定しました。県は、2027年を目途にツキノワグマの管理計画を策定する方針です。

県の検討会で委員長を務める東京農工大学大学院の小池教授は、今後、冬眠しないクマも増える可能性があると話します。

<東京農工大学大学院 小池伸介教授>
「冬眠っていうのは寒いからするんじゃなくて、エサがない時期をどうやってやり過ごすかっていう中で編み出された戦略。逆にいうと、こう集落の中に柿がたくさんあったりすると、いつまでもクマからすると食べられるんですよね。そうすると冬眠が遅れたりが場所によって出てくる可能性はある」

この問題にスムーズに対応していくためには、専門の知識を身につけた職員を配置することが大切だと言います。

<小池教授>
「今までと同じ管理計画を立てるだけじゃなくて、体制ももう一歩踏み込むということを考えてもいいのかなとは思う」

全国各地で人的被害をもたらしているクマ。静岡県でもさまざまな機関が連携し、住民を巻き込んで向き合ってゆく必要があります。