ゲームの舞台に伊豆半島を選んだ理由

パブロさんが最初につくったドライビングゲームのプロトタイプ動画

あえて伊豆半島を"サーキット"に選んだのは、運転するには難しい曲がりくねった道が多いから。道路脇にある標識や看板、橋の欄干まで再現されている。車は道路上の継ぎ目に反応して「ガタン」と揺れる。

「ゲームクリエイターは、走りのリアルさを引き出すために、道路上にわざと段差を"仕込む"こともある。だが、バーチャル静岡は実際に存在する道路そのもの。リアルである面白さと価値を、彼はいち早く見出してくれた」。杉本さんは、パブロさんの動画を視聴した時の喜びを今も覚えている。

パブロさんの動画は杉本さんにとっても、ある発見をもたらした。バーチャル静岡が提供する3Dデータは、物体の縦、横、高さを無数の点で表した「点群データ」だ。当時、建物や風景の姿を目に見えるようにするには、3Dデータ処理専門のソフトウェアに取り込むのが一般的だった。パブロさんはデータを専門ソフトウェアで処理したうえで、さらにゲーム開発用のソフトウェアに取り込んだ。

点群データをゲーム開発ソフトウェアで活用する事例はまだ、世界でもほとんどみられなかった。それだけでなく、仮想空間にある町並みも建物もすべて、CGでゼロから構築するのが当たり前だった。杉本さんは「実際の地理・地形を実測したバーチャル静岡のデータは、容量が非常に大きい。それを、ゲーム開発ソフトで"動かせる"ことに気付いて感動した」という。

早速、パブロさんの動画をSNSに投稿した。「僕も作ってみた」「点群データは他のソフトウェアでも利用できる」など、続々と反響が寄せられた。