静岡県は全国で初めて、地理・地形の3Dデータを無償で公開した。誰でも自由に、仮想空間の中に"もう一つの"静岡県をつくれるようになった。まるで双子のようにそっくりなことから、"もう一つの"それは「デジタルツイン(双子)」と呼ばれる。静岡県が、県内全域の3Dデータを公開するウェブサイト「VIRTUAL SHIZUOKA(バーチャル静岡)」を2020年に開設して5年。さまざまな分野で、県土のデジタルツインの活用が広がっている。
伊豆半島の山道を、車が猛スピードで走り抜ける。メーターの時速は140キロを突破。運転手の目線から撮影された動画を見ながら、対向車は来ないのかとヒヤヒヤする。
動画に登場する風景は、本物のようにみえるが本物ではない。バーチャル静岡を使って仮想空間につくられた「デジタルツイン」だ。
静岡県庁のパソコンに「私がつくった動画を見てほしい」と、英語のメールが届いたのは5年前。県がバーチャル静岡を開設して間もない頃だった。
「てっきり海外からのスパム(迷惑メール)かと思った」。県デジタル戦略課参事の杉本直也さんが恐る恐る開くと、そこには感謝の言葉がつづられていた。「データをくれてありがとう。本物の日本のデータを使ったのは初めてだ」