本番の2時間前。
会場では友人や息子の佳一郎さんが準備を急ぎます。
小山さんも久しぶりに、お気に入りの衣装に袖を通しました。
ベッドでの時間が長くなっていた小山さんですが、スタッフのサポートで、車いすでの移動も叶いました。
患者や看護師など30人ほどでいっぱいになった会場。

小山さんが選んだのは「わすれられない おくりもの(作/絵:スーザン・バーレイ 訳:小川仁央)」です。
■朗読
「目の前にはどこまでも続くながいトンネル 足はしっかりとして力強く もう杖もいりません」
■小山菜穂子さん 「トンネルの向こうということは、要するに“死の世界”ですね。物語では、自然な感じで死に向かっていくでしょう。この感じがいいと思う。アナグマのおばあちゃんも自然に死を受け入れられたんじゃないかなと思うんですよね」
物語では、アナグマの死を仲間たちが少しずつ受け止めていく様子が描かれています。
■朗読
「みんなだれにも なにかしらアナグマの思い出がありました。アナグマはひとりひとりに わかれたあとでも たからものとなるような知恵や工夫を残してくれたのです」
小山さんは10分あまりをかけて物語を読み終えました。

■小山菜穂子さん
「立って皆さんにお礼をいうことができないのが残念ですけれど、本当にきょうはありがとうございました」
■朗読を聞いた看護師
「絵本なんだけれど メッセージ性がすごくあったなと。読んでもらって、いい話だったなと思いました」

■小山菜穂子さん
「物語の中身がちゃんと伝わって、皆さんが自分なりの思いを持っていただくということが、私の中では一番の幸せかなって思うんです」
病気を経験したからこその気付きがあるという小山さん。
朗読家としての新たな一歩を踏み出しました。