〇弁護側の冒頭陳述
弁護側は冒頭陳述で、青木被告は、小中学生の時に人の目を見て話すことができなくなり、高校生の時は電車通学を1か月したものの、その後、片道およそ13キロの距離を自転車で通学するようになった。大学に入学し寮生活をしたものの、寮生や大学の同級生から「ぼっち、きもい」と聞こえるようになり、アパートで一人暮らしを始めた。しかし、アパート内での行動がほかの学生にも知られていると思い、部屋に監視カメラや盗聴器の存在を確信するようになった。

大学3年生の7月、連絡が取れないため両親が訪ねた際、青木被告の表情は青白く、痩せこけていた。

両親に対して、監視カメラや盗聴器の存在を知らせ、自分の様子などがネットを通じて、世間に拡散されるいじめを受けていることを初めて伝えた。その後、両親は探偵に依頼し、監視カメラなどを探したものの見つからず、大学を中退させて、中野市の実家に戻った。

2014年以降、実家に戻り父親の農業を手伝うようになった青木被告は以前のように笑顔が戻ってきたが、2年後、両親が携帯電話の電源がいつも入っていないことを尋ねると、青木被告は、携帯は盗聴・盗撮されている、人はみんな自分を「ぼっち、ぼっち」と笑っていると説明した。

その後、ジェラート店で製造を担当することになった青木被告。製造スペースを段ボールで目隠しして作業をしていた。2023年には中野市の店舗の経営を任されることになった。8月、店内を撮影した客の髪を引っ張ろうとして「ニヤニヤして俺のことをばかにしていた」と説明した。また、9月にはアルバイト従業員に対し、殴りかかった後、「ぼっち、ぼっちとばかにしただろう、殺すぞ」と言った。その後、青木被告は、事件前年の2022年頃から被害者の女性2人が自宅の前を通るときに「ぼっち、きもい」と聞こえるようになり、その声に耐えていた。

初公判時 弁護側(9月4日)


【犯行当日の状況】
・25日午後4時16分過ぎ
被害者の女性2人が自宅前を通りかかり、「ぼっち、きもい」という言葉が聞こえ、青木被告の怒りが我慢の限界に達し、2人の殺害を決意。自宅物置に戻り、ナイフを持ち出し殺害した。目撃者には攻撃も口止めもしない一方、遺体を隠そうと考えた。

その後、警察官が来て銃で殺されると考えた青木被告は、威かく目的でハーフライフル銃を自宅に取りに戻り、待ち構えた。パトカーが到着すると、警察官が銃を手に取り発砲すると思い、2人にライフル銃を発砲し、さらに車外で倒れこんだ警察官をナイフで刺し、殺害した。

自宅に戻ってきた母親に青木被告は、「おばさんが、散歩して、ペチャクチャしゃべりながら、俺のことを「ぼっち、ぼっち」と言うから、刺したんだ」と話した。さらに「警察官に撃たれると思ったから、撃ったんだ」「ぼっちぼっちと言われていたのに、警察が何もしてくれなかった」などと、説明していた。母親が自首を勧めると、青木被告は「絞首刑になる、それは嫌だ」と話し、これを拒否。その後、母親から自害を勧められ、銃口を自分のあごにつけて2回発砲したものの、命中しなかった。母親から「撃ってやろうか」と言われライフル銃を渡すと、母親は銃を持ったまま、家を出て警察官に渡した。精神鑑定の結果、犯行時における被告の精神状態は「統合失調症の再燃・憎悪の状態」だった。