差別扇動に乗せられてはいけない

男性党員は「モスクがあることを認めている箱崎の人のせいで、日本はひどいことになっているのだ」という趣旨の発言をしていました。九州大学が移転するまで100年以上、箱崎は「九大のある街」という誇りを抱いてきました。日本の伝統文化も残っていますし、さらに留学生が多く住み、今でも多国籍の文化も共存してきている地域です。それもひとつの魅力です。

外国の方が増えてきていることを、「怖い」と思ってしまう気持ちを持つ人もいますが、モスクは住民の見学会を開いたり、地域の理解を進めようと努力してきています。「外国人が起こす事件が日本人よりも割合として多い」というのは統計上も否定されています。「ネット上の外国人排除的なデマを鵜呑みにしているなあ」という感じがすごくしました。

公園での祈りの写真を見ると、イスラム教徒がたくさんいるように見えます。お祭りの仲間にネットの写真を見せると、「え、こんなに集まっているの?」とびっくりしている人も確かにいました。

しかし、驚いて映像をシェアした人も、実態と離れているのに外国人憎悪を広めてしまっている、無知ゆえの行動だと私は思います。実際に「常識的な人が多いのですよ」と地元自治会長も言っています。

日本第一党の人たちは街宣中は話を聞いてくれる状況ではありませんでしたが、街宣が終わった後だと、冷静にインタビューに応じてくれる人もいました。ただし、伝統の祭りを愛して参加している私やヘイトスピーチに怒っていた民族派右翼の女性と、祭りを結果的に汚してしまっている人たちとを比べてみてほしいです。いったいどっちが保守なのか?

この取材で私はすっかり疲れてしまいましたが、翌14日の「御上り」にはちゃんと参加しました。最後にお聴きいただきたいのが、箱崎伝統の一本締め。箱崎は旧粕屋郡で博多ではないので、有名な「博多手一本」とは締め方も違うのです。

さあ、一本締めるぞ!
ヨー、せーの!(手拍子3回)
もひとつ、せーの!(手拍子3回)
ヨー、せーの!(手拍子3回)
ヨーイ!


「邪気払い」のために聴いていただきました。

放生会に参加した神戸解説委員長

◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。学生時代は日本史学を専攻(社会思想史、ファシズム史など)。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。東京社会部勤務を経てRKBに転職。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材にしたドキュメンタリー映画『リリアンの揺りかご』(2024年)は各種サブスクで視聴可能。最新作のラジオドキュメンタリー『家族になろう ~「子どもの村福岡」の暮らし~』は、ポッドキャストで公開中。