路線価から見えてくる「未来の地図」

私は国税庁を記者として3年半ほど担当したので、路線価も取材したのですが、土地の価格というのは本当に様々な決まり方をするということを実感しました。私が現場で取材した30年近く前は、東京の銀座とか福岡の天神などは全体的にその地域が高いという感じだったのですが、ちょうどそのころから、同じ銀座や天神でも、道一本隔てれば、場合によっては数件違っても4割くらい違うという土地が出てきていました。

地元の不動産業者に片っ端から実勢価格を聞いて回って、路線価よりも極端に高い土地、逆に安い土地を色分けしながら分析すると、高いところは地上げが進行中だったとか、十数年先に新たな地下鉄が通って駅ができる予定があるとか、スーパーが土地の取得を始めているとか、様々な理由が分かって、言ってみれば「未来の地図」が出来上がっていくわけです。

さらに土地の登記簿謄本を取っていくと、土地所有者や売買の履歴、関わってきた個人や会社が分かり、中には暴力団のフロント企業だったりもするのですが、そうしたことが分かってその土地の持つストーリーが浮かび上がってきます。それが面白くてやめられなくなって、登記簿を取るための印紙代が何万円にもなって上司に怒られたこともありました。

つまり、路線価などはいわば参考価格で、実際に取引される価格というものはもっと生き物のように動いていることが分かります。よく公示地価や基準地価が実勢価格に近いという解説を見ることがありますが、土地が動くときには売り手と買い手の状況や、未来にそこがどうなるかということで値段が大きく変わってくるので、国が算定する指標とは乖離が大きくなります。

それでは、路線価、公示地価、基準地価と三つも指標が必要なのか、ということになりますが、私はこれから説明するような理由で、必要だと考えます。