女性候補者の4人に1人が選挙期間中にセクハラ被害

そういう状況が何をもたらすかっていうと、いわゆる票ハラスメント(票ハラ)というのが出てくる構造になるんですね。男性議員ももちろんハラスメントを受けている方が沢山いると思います。

候補者になったから分かるんですけれども、路上でものすごい扱いを受けます。「こんなにひどいこと言われんのか」っていう体験をするんですけど、女性の場合はそれがセクハラに繋がるんです。

内閣府が2021年に行った調査では、女性候補者の4人に1人が「選挙期間中にセクハラを受けた」と回答しているんです。

どんな内容かというと「毎日のように様々な男性から抱きつかれて尻を触られた」「握手の数が票に繋がると言われるので、握手をしたら色々触られてくる」「街頭で差し出したビラを受け取らず舌で舐めた男性がいた」という身体的接触があったり、「付き合っている人はいるのか」「結婚はまだか?子供はいるの?」「若いんだから選挙に出るより子供を産む方が社会貢献になるよ、あんたが立候補するより」と言われたり…。そういう酷いことがあるんですね。

各政党でハラスメント撲滅のための委員会が設置されてはいるんですが、例えば私も「2児の母、シングルマザー」って書いてたら、「てめえが勝手に子供産んどいて、勝手に何かしたことを偉そうに言うな」と言われたりするんですよ。

大阪で「てめえ」なんて言葉は一般的に使わないんですね。江戸の言葉みたいな感じで言われるんですね。だから私は「なんでそんなことあんたに言われなあかんの! 私はあなたにそんなこと言われる覚えはない」って言うんです。

でも、それを言えない女性候補者も多いし、ましてや選挙のやり方そのものが「ものすごく追い詰められた男性のあり方」から始まっているんです。例えば、負けたら全部失う、仕事も収入も全部絶たれるから、それはみんな必死でやるわけですよね。

女性議員が増えることで変わること

選挙運動で、女性がトイレに行く時間を計算せずにスケジュールを組むことがあるんです。私が出馬したときはちゃんと言いましたけども、他の政党の女性候補者から「私、オムツはいてやっています」というのを聞いたことがあります。つまり、トイレに行く時間がないと。

「行きたい」って言ったら「いや、そんなん行ってる暇ない」と言われるんです。選挙カーに乗ってどこかに移動しているときにトイレに行くことってないので。ウグイスさんと言われる、名前を連呼する女性がいますけど、彼女たちもオムツしてるって言うんですよ。

女性というのは男性に比べて尿道が短いので、トイレに行きたくなることは多くある、しかも暑いときだったら脱水症状になるから「水飲んでください」って言われる、そうすると当然トイレ行きたくなるわけで。

オムツをはいて訴えをするって、非人道的な扱いを受けていると思うんですよ。候補者そのものが。だから、選挙で当選したらマインドが「見とけよ」「見返したるぞ」「お前ら見とけよ」みたいな気持ちになる人もいるんじゃないかなと。

選挙のあり方そのものをやっぱりちょっと考えなきゃいけない。それは、女性候補者とか女性議員が増えることで見えてくる景色とか、上がる声の種類が変わってくることってあるし、若い人が立候補したいと思える環境を整えるということに関しても、同じように変えていかなきゃいけない。「まずは女性議員を増やしましょう」というところから入ったらいいんじゃないかなと思います。

◎谷口真由美(たにぐち・まゆみ)

法学者。1975年、大阪市生まれ。2012年、政治談議を交わす井戸端会議を目的に「全日本おばちゃん党」を立ち上げる(現在は解散)。元日本ラグビーフットボール協会理事。専門は、人権、ハラスメント、男女共同参画、女性活躍、性教育、組織論、ジェンダー法、国際人権法、憲法。