グローバル社会の中で問われる日本の姿勢

ジェンダーギャップ指数という言葉がニュースで出てきますよね。世界各国の男女格差を示すものですが、日本は今年146か国中118位でした。下から数えた方が早いんですよ。日本は、平均寿命も長かったり、初等教育も充実していたりして、割と生きていきやすい国なんですが、そこに「女性」という性別を入れただけで、ものすごく生きづらくなるというのがこのジェンダーギャップ指数なんですね。

最近、選択的夫婦別姓の話でなぜ経団連が動き出しているかというと、今はもう「ビジネスと人権」という文脈も出ているくらいで、要は企業が取引をするときに、人権状況がちゃんと整ってなかったり悪かったりしたら「もう取引しません」というのがグローバル社会の標準になりつつあるんですね。

リスナーの皆さん、「ウチは中小、零細やから関係ないわ」と思っているかもしれませんが、ある日突然大企業、取引先から「あなたの会社の人権状況を知らせてくれ」というような通知が来るかもしれません。そこでもし人権状況が良くないとなってしまったら、取引停止であったり、「こういうふうに是正してください」と言われたりするケースも出てきます。

今そういう時代にあって、国際人権というのは一つの基準なので「それを知らない」とか、「使えていない」とか、「条約の趣旨と全く違うことをしている」みたいなことってよろしくないですよということが言われているわけですね。

だから、女性差別撤廃委員会の審査でどういう勧告が出るか分かりませんけれども、それを全然誠実に履行してこなかった日本政府およびそれを支える世論というものに対して、厳しい目が向けられているということが考えられます。

人権の保障を世論調査や人々の感情で推し量ったら駄目なんです。特に少数者の人権というのは、多数者がいくら好きだとか嫌いだとか言おうが関係ないんですよ。「人権なんで」っていう話です。

そのあたりの人権のきちんとした理解を深めるためにも、この女性差別撤廃条約の委員会の審査というものに注目をしていただきたいですし、選択的夫婦別姓が今回の選挙の争点になっていますけど、本来選挙の争点ではなくて、すぐにでもやらなあかん話なんちゃうの? っていうのが実のところあります。

◎谷口真由美(たにぐち・まゆみ)

法学者。1975年、大阪市生まれ。2012年、政治談議を交わす井戸端会議を目的に「全日本おばちゃん党」を立ち上げる(現在は解散)。元日本ラグビーフットボール協会理事。専門は、人権、ハラスメント、男女共同参画、女性活躍、性教育、組織論、ジェンダー法、国際人権法、憲法。