神楽団の後継者不足が言われる中、広島市安佐北区では、地域で活動する若手の団員たちが協力して、1日だけの特別な神楽公演を行いました。

伝統を大切にしながら、台本も演出も自分たちだけで作り上げた若手団員たちの挑戦を取材しました。

聞こえてくる笛や太鼓の音・・・

神楽の練習です。メンバーは全員が“若者”。実は、地元・安佐町にある4つの神楽団(あさひが丘神楽団、飯室神楽団、鈴張神楽団、宮乃木神楽団)から選ばれた、全員「30歳以下」の即席の「若手神楽団」です。

垣根を超えた若手神楽団は、3週間後に開かれる神楽祭りで、1日限りの公演をするために結成されました。上演する演目は「日本武尊(やまとたけるのみこと)」ー。

主役のヤマトタケルを演じるのは21歳の松島優駿さんです。所属する神楽団ではメインを務めることはないといいます。

ヤマトタケル役 松島優駿さん
ー自分なりのヤマトタケルができれば。先輩たちのいい動きがあればそれをいれながら。台本も衣装も自分たちが考えた。普段所属する団でもヤマトタケル役をやったことがないので、どういう人物にしているのかとか、どういう心なんだとか、考えるのが難しい。

台本や演出も若手だけで仕上げていきます。キャラクターの心情を自分たちでゼロから考える難しさに苦戦していました。

オトタチバナヒメ役 田中貴子さん
ー演じるのは、主人公のヤマトタケルの奥さんのオトタチバナヒメ。ヤマトタケルのみことのために死ぬんですけど、「喜んで死ぬ」っていう表現が難しい。「好きな人のために死ねますか?」っていう…。

駿河の賊役 掛川碧生さん
ーどうやってタケルを追い込むか、行動とか所作とかでみせないといけないので、そこが難しい。

メンバーが掲げるテーマは「挑戦」。「若手神楽団」を結成したのは神楽に興味を持つ若者が減っていく中、“若い発想力”で新しい神楽を生み出し、関心を高めたいという思いがあります。後継者不足がいわれる神楽団の存続のため、横のつながりを強め、協力しあえる関係を作る狙いもあります。メンバーは、自分たちだけで作り上げる神楽に「若手らしい創意工夫」を詰め込みます。

オトタチバナヒメ役 田中貴子さん
ー普段の自分の団の神楽では、効果音入れないんですけど、やっぱりこれ「挑戦」なので、効果音や雷の音とかを入れたいと。衣装もこれは神楽衣装じゃなくて、amazonで買ったんですけど、そういうのをいれてもアリなのかなと。

伝統の神楽に、効果音や衣装の工夫、斬新な演出。若手たちの神楽は、「新奇神楽舞(しんきかぐらまい)」と名付けられました。

メンバーをサポートするのは、鈴張神楽団の団長、橋原慎也さんです。

鈴張神楽団 橋原慎也 団長
Q.きょうの練習の出来は何点ぐらい?
ー50点ぐらい。
Q.彼らの練習を見てどう思うか?
ー普通の神楽はできて当たり前なので、演出や効果音、紙吹雪っていうところが、どれだけマッチングしてくれるかがキーポイントになってくる。

ベテランの厳しい言葉も、力に変えます。

ヤマトタケル役 松島優駿さん
Q.ベテランたちに負けたくない?
ー負けたくないですね。

オトタチバナヒメ役 田中貴子さん
ー若い子たちが「いいじゃん神楽」って思ってくれる要素があればいいなと。

練習夜遅くまで続けられました。