■「おかえり!」声に出せない思い


千尋さんの弟はすでに成人となり家を出ていて、当時千尋さんが住んでいた家では、比呂子さんが1人で帰りを待ち続けています。比呂子さんは、自分が外出中に千尋さんが帰ってきた場合を考え、部屋には自分の携帯電話番号を書いたメモを貼っています。


比呂子さんのノートには、ここ数年新たに文字が書かれていません。千尋さんの行方について、少しでも情報が増えれば、空のページは埋まっていくはずです。

ノートの背表紙にこう書かれているのに気付きました。

「千尋が帰ってくるんだって!」「わーい!うれしいね!ありがとう!」「ちいちゃーん!」「お帰りなさい!」「会いたかったよ!!」


比呂子さんに聞くと、笑ってこう答えました。

(母・比呂子さん)「正直に言うと、少しお酒を飲んでしまったときに、つい書いてしまったんです」

■県内では毎年2000人弱の行方不明が届け出される


警察庁の発表によると、2020年の全国の行方不明者の届出受理数は、約77000人。このうち広島県では、1845人です。県内を年代別にみると、20代の行方不明が最も多い366人。次いで多いのが10代の337人と、20代以下の行方不明届が全体の4割近くに上っています。

原因・動機別では「疾病関係(認知症含む)」が最も多く、次ぐのが「不詳」です。それに「家庭関係」「職業関係」と続きます。

■それでも母は娘の帰りを待ち続ける


行方不明者の生死が7年間明らかでない場合、家族などは家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることができます。これによって遺産相続や死亡保険などの手続をおこなうことができますが、比呂子さんは申し立てはせず、千尋さんの帰りを待ち続けることにしています。

(母・比呂子さん)
「絶望よりも、希望を持ち続けたい…」

8年前、千尋さんが数枚の葉から増やしたベゴニアは、比呂子さんの手で大きく育ち、今年も美しい花を咲かせています。

取材/RCC中国放送 県警班キャップ 家森亮

藤野千尋さん(25歳)について

身長156センチ・体型中肉・血液型AB型
水色のポケットのたくさん付いた作業シャツ
ライトグレーの作業ズボン着用
ピンクのハンドバッグと白いトートバッグ所持
白にピンクのラインの入ったスニーカー(24.5センチ)
頭髪は、髪を後ろでひとつに束ね、通常はメガネをかけている。
※すべて行方不明当時


情報提供先:佐伯警察署(082―922―0110)