― 今、原爆資料館は1階のガラスの部分が完全に白い膜に覆われて、中が見えない状態となっています。平和公園で今、岸田総理は、この資料館で各国首脳が実際に目で見てほしいという思いを強くして、今回の誘致を行ったという話も聞かれていますけれども、どうでしょう、岸田総理の思い?

原爆資料館 元館長 原田浩 さん
「確かに岸田総理は、広島出身の総理大臣でございます。だからこそ、広島としては非常に大きな期待を持ってお迎えをするわけですけれども、今、申し上げたように、被爆の惨状がどこまで伝わるようなメッセージを発信してくれるのか。そこは、しっかりと見極めていきたいという気持ちでいっぱいです」

― オバマ元大統領のときには10分間というたいへん短い時間でした。
「オバマさんも広島にやってきた。それは非常に大きな成果だと思います。現職の大統領が広島にやってくるということは、歴史的にも最初のことでもありましたので、大いに期待をしたわけですけれども、広島でどういう行動を彼が起こしてくれたのか、資料館の館内の展示を約10分間、その10分間の中には小中学生に折り鶴をプレゼントしてくれる。そして、またメッセージを発信してくれる。そういったことはありましたけれども、実際の関連の展示は残念ながらほとんど見ていないと思います。しかも、被爆者の声は、彼の耳には届いていないと、そう考えたときにはたしてああいうふうな行動でよかったのかなという大きな疑問は残しています」

― バイデン大統領が平和公園に到着しました。まだ、何かを確認しながら、一歩一歩ゆっくりとジル夫人と歩いて行っています。今、手を挙げました。岸田総理に対して今、手を挙げたところです。アメリカの現職の大統領としては2人目、この平和公園を訪れました。

原田浩 さん
「アメリカの大統領が平和公園に来たというのは、非常に大きな意義があると思います。だけど、その被爆の前にここにどういうふうな間違いがあったのか、その街の名前をしっかりと自覚して、自分で確認したうえでメッセージの中に加えてほしいと思います。一瞬にして多くの人が亡くなった。そのことを決して忘れてはいけない。それを伝えるのが、平和公園だと思っていますから。ぜひ、そこのところはしっかりと受け止めていただきたいと思っています」

― 街並みという意味では、きのうは広島市内を車でかなりゆっくりと回りました。以前のオバマ元大統領のときには、広島に来て、すぐ帰っていくというような、それこそ2時間もかからずに広島から出ていくようなスケジュールでしたけど、
今回は、3日間のサミット。そこで広島を感じるわけですよね。

原田浩 さん
「そこは、非常に注視したいと思います」

共同通信社 編集委員・論説委員 太田昌克 さん
「車を降りる前の数分間ですよね。そして、歩いてこられた険しい表情。ご自身がどういう思いか、わたし、知りたいんですよね。今、原田さんがおっしゃられた。ここは公園なんだけど、実は78年前に大勢の人々の生の営みがあったんですよね。愛情があった。温もりがあったんですよね。それが地獄と化したわけですよ。アメリカの1発によってです。その歴史の事実の重み、死者が眠っているということを
バイデンさんが、そこをしっかりと、事前に情報が上がっていると思いますから、そこを踏まえたうえでこのおごそかな表情で登場されたんであったら、何らかしらのいい結果が期待できるんじゃないかなと思うんですが、そうではなかったら残念な結果になるということだと思いますね。

原田浩 さん
「もう1つ、お伝えしたいというのは、原爆を使用して慰霊碑に参拝されるのは、それはもちろん大切なことだろうと思います。あの中には名簿が入っています。わたしの親の名前も刻んであります。しかし、そのちょっと向こうには原爆供養塔があります。その供養塔の中には9万人の無縁仏が眠ったままになってます。14万人の市民の命が失われたといわれましたけども、その半数は現在でも誰の骨かわからないものが眠っていると。だから、広島の原爆というのは、現在形であるということをしっかりと考えておいていただきたいと思います」