気候やスペースの問題から広島県内では牛を放牧して育てるのはなかなか難しいそうです。広島市の牧場が、そんな「放牧」を目指してイベントを開きました。「牛の棲む森」をつくるプロジェクトです。

気持ちのいい、青空が広がった週末…。広島市佐伯区の湯来町にある「サゴタニ牧場」です。緑豊かな牧草地で開かれたのは、「牛の棲む森プロジェクト」の植樹体験会です。

サゴタニ牧場は、2年前から草木に覆われていた傾斜地の開拓を始め、2030年には、放牧して育てた牛から乳を搾ることを目標に取り組んでいます。森は、夏場に牛が休める木陰となります。

砂谷 久保宏輔副社長
「10年後に『場所ができたので、みなさん、お越しください』ではなくて。一緒に作っていく。その過程も楽しんでもらえるようなプロジェクトにしたいなと。」

プロジェクトに賛同したおよそ100人が、3日間に分かれて参加しました。
植樹されたのは、ケヤキやカエデ・ミズナラなどおよそ10種類・60本。森をデザインするのは、広島市で造園業を営む着能松太郎さんです。広島の盆栽のブランド化にも取り組むスペシャリストです。まずは、着能さんの指導のもと、参加者は植樹のやり方・ポイントを学びました。そして、それぞれが割り振られた場所で用意された苗木を植えていきます。

参加者たち
「たぶん自分の中でも一生残るし、この下で牛さんが休んでくれたらうれしいなと思います。」
「すごくおもしろそうなことやっているなと思って。100年後に『牛の棲む森』を作るって、すごく共感しました。」
「(イタヤカエデには)調和という花言葉があるらしくて、すてきな話だなと。ここに年に何回か来るときに、この木にも会いに来たいなと思います。」
今回、『牛の棲む森』ということでしたが…。
庭能花園 着能松太郎さん
「牛が斜面を登れるのを知らなかったので。急斜面で自然放牧できるんですかというのが、率直な感想でした。」

遠くからも牛の姿が見られるようにという要望に応えて、落葉樹を中心に選定したそうです。プロジェクトに携わって着能さんの思いも広がります。
庭能花園 着能松太郎さん
「ぼくらの子どもだったり、孫だったり、ひ孫だったりっていうのがちゃんと育てるのに参加してくれるような、そういう場所にしていきたいなとは思います。」
実は今回、プロジェクトには、サゴタニ牧場と同じく、湯来町に本社を構える家具メーカーのマルニ木工のメンバーも参加していました。「育てた木で家具を作ってほしい」と相談を受けたそうです。