行政の見解は…原則と現実のはざま

区役所の担当部署に確認すると、回答は明快でした。
「国勢調査員の業務時間中に知り得た情報は、内容の如何を問わず漏えいは認められない」
一方で、現場の苦悩は理解していました。担当者は、「町内会に協力をお願いしている以上、こうした葛藤は想定していた」としています。
「人の口に戸は立てられぬ」。古い言い回しは、情報があふれる現代でも重くのしかかります。任務と地域活動が重なる接点で、原則と現実の“狭間”が浮き彫りになっています。
■「知っていれば防げたのでは」ジレンマ
近年、ニュースでは外国人居住者の課題や、トラブルを繰り返す人の話題が取り上げられます。
地域で何かが起きたとき、「あの時、共有できていれば…、と後悔するのではないか」と口にする調査員もいます。だからといって守秘義務の“抜け道”はありません。
一方で、インターネットでは拾えない生活実感の情報こそ、地域の安全につながることも事実です。矛盾する二つの要請に、現場は応え方を模索しています。