今年も島のあげての一大行事がやってきました。大崎上島の伝統行事、櫂伝馬競漕です。地区のプライドをかけた熱き闘いを取材しました。

◆第1レーススタート◆

実況「さあ始まりました。櫂伝馬第1回競走スタートです」

大崎上島の東部に位置する木江エリアの櫂伝馬競漕。4つの地区に分かれ、年に一度、4回のレースで総合得点を競います。

解説「回るところ、ブイ(浮き)でうまく回れるかどうかですね」

実況「まずゴールしました天満地区、そして宇浜、岩白とそれぞれゴールしました」

この日で船頭が引退する郷チームは最下位スタート。

この日で引退・郷チーム 浜田慎太郎船頭
「僕のミスもあって、みんなよく漕いでくれたんですけど」

第1レース1位・天満チーム 藤原啓志船頭
「今年は3連覇もあるが完全優勝を目指しているので、全部1番で帰ってこれるよう頑張りたい」

櫂伝馬競漕は200年以上の歴史がある大崎上島の伝統行事。子どもの頃から櫂伝馬に親しんできたという谷川町長も島を一つにつなぐイベントだと話します。

大崎上島町 谷川正芳町長
「かこで漕いでいた人たちも世話役になっても、サポートしながら全員で助け合ってやる。一枚岩になれる大崎上島の宝」

今年、新しい船頭がデビューしました。

船頭デビュー・岩白チーム 渡辺貴之船頭
「この祭りのために島に帰ってくる人もいる。祭りの前から有給使って帰ってきたりする人もいるんで助かります」

岩白チームに懐かしい顔がありました。地元の高校で生徒会長を務めていた道林さん。島の外で就職し2年ぶりの凱旋です。

岩白チーム 道林海斗さん
「今年こそリベンジで優勝します。去年はいなかったが今年は帰って来れたので」


第二レースは1kmを超える長距離。岩白地区の沖合がスタート地点となります。

岩白地区の住民
「若い子が少ないからこの地区は、高校生がたくさん乗ってくれているので、ありがたいと思います」
「島では子どもたちが幼稚園の頃から太鼓の音が鳴ったら船に乗ってた」

去年、郷チームのマネージャーを務めた高校3年の河内ひよりさん、今回は応援に回りました。

◆第2レーススタート◆

河内さんは並走する車から応援「天満と並んだ、がんばれー。郷、ガンバレー」

第2レースも天満チームが1位でゴール。

郷チームの在間さんは、岡山県から大崎上島の高校にやってきました。

郷チーム 在間春瑛さん(岡山県総社市出身 大崎海星高校3年)
「この地域は活気があって高齢の人が多いのになんでだろうと思ったときに若者が活発に活動している。この櫂伝馬もその一つに入ると思います」

◆第3レーススタート◆

午後からの第3レースはブイ3カ所を回る旋回コースです。一昨年は、接触事故を巡り天満チームと郷チームが乱闘騒ぎになりました。毎年、波乱が起きる鬼門のレースです。

今年も天満チームと郷チームが接触しますが・・・


天満チーム 藤原啓志船頭
「接触して船を回されたんですけど、深いブイのときには起こりうるんで」

郷チーム 浜田慎太郎船頭
「どうしても一つのブイに向かっていくので、ぶつかるのは仕方ない」

郷チームはこの日初めての1位。

郷チーム 在間春瑛さん
「1番とれたので最高でした。ぶつかったところでも失速せずに、うまく隙間を浜田船頭が抜いてくれたんで。楽しいですね、一番とったらアドレナリンが出て疲れなんて吹っ飛びますね」


白の宇浜チームも郷チームと同率2位につけています。

宇浜チーム 佐々木悠船頭
「ボクらも厳しい中で2位に滑り込んだのは大きかったです。みんなの力が合わされば勝つチャンスはあると思うので最後まで気合い入れてやります」


◆第4最終レーススタート◆

最終レースは、沖のブイを折り返すコース。暫定4位の岩白チームが1位でゴール。天満チームは午前中の貯金で逃げ切り3連覇を達成しました。

郷チームは総合4位。去年、マネージャーをつとめた河内さんは、来年春、高校を卒業し島を離れます。

郷チーム元マネージャー 河内ひよりさん(島根県出身 大崎海星高校3年)
「郷チームの人たちは凄く温かくて受け入れてくれて、最後に一緒にユニフォームを着て写真を撮ることは出来なかったが、貴重な体験を島ですることが出来たし、今年最後だったので思いがこもりました」


この日で引退・郷チーム 浜田慎太郎船頭
「みんな10年間有り難うございました」
(浜田さん胴上げ)

郷チーム 浜田慎太郎船頭
「もう世代交代、どんどん新しい人に。ただ勝つだけじゃなくてチームワークをしっかりと持って取組んでほしいと思う」

島の外で就職し2年ぶりにレースに参加した道林海斗さんは4人兄弟。今回、弟が天満チームで優勝しました。

岩白チーム・長男 道林海斗さん(19)
「優勝はおめでとうなんですけど、敵チームなので」
天満チーム・次男 隼斗さん(18)大崎海星高校3年
「敵でも家に帰ったら櫂伝馬の話で盛り上がる」
岩白チーム・三男 拓斗さん(15)大崎海星高校1年
「兄弟でお兄ちゃんと一緒に戦えて楽かったです」
四男・湊斗さん
「来年は岩白チームに入ります」

海斗さんは、弟たちに期待しています。
長男・道林海斗さん
「兄弟4人とも櫂伝馬好きでやってるんで、僕がもし行けなかったとしてもあとの3人が櫂伝馬を引き継いでくれると思ってます」
弟たち
「やります、やっちゃります」

祭りの最後は、3500発の花火大会。この日で引退した浜田さんを幼なじみでライバルの藤原さんがねぎらいます。

天満チーム・藤原啓志船頭
「僕は慎太郎が島に帰ってきて、櫂伝馬に乗って船頭やり出したのはめちゃくちゃ嬉しかった、同級生という掛け替えのない存在」

引退した郷チーム・浜田慎太郎船頭
「船頭で戦うことはないが、櫂伝馬には携わっていく」

(Q:これからも二人で櫂伝馬を盛り上げていく?)

天満チーム・藤原啓志船頭
「盛り上げるというか、お互いやるべきことやった結果、盛り上がればいい」


(スタジオ)
世代を超えて伝統を守り続けようとしている。少子高齢化が進む大崎上島の伝統行事に島の外からきた高校生も積極的に参加しようとしているのが印象的…