10代の若者3人が容疑者となっている府中町で起きた強盗殺人事件。今回のように容疑者の3人がいずれも少年の場合、通常の刑事事件とは異なる扱いとなります。今後の流れについて、犯罪学や少年法に詳しい専門家に話を聞きました。

広島大学 法学部 吉中 信人教授
「大人の事件と違って、まずは家庭裁判所に送致されるということになります。『家庭裁判所全件送致主義』と言いますが、そこで、この少年らにとって最もふさわしい適切な処遇・取り扱いはなにかを決めていきます」
3人の容疑者は検察での捜査を経て、家庭裁判所に送致される見込みです。家庭裁判所での処分が今後の焦点になります。
家庭裁判所では、少年院や保護司の監督下で少年の矯正をはかる「保護処分」に処すか否かを審判します。ただし、そもそも審判の必要がない場合は、審判不開始の判断がされます。しかし、重大事件など「保護処分」ではなく懲役などの刑罰を科すべきと判断した場合は、家庭裁判所から検察に「逆送」されることがあります。
「逆送」されるか否かは、事件の重大性だけでなく、年齢によっても考え方が異なります。18歳以上の場合、2021年に改正された少年法で選挙権が付与され、民法上は成人となっていることから「特定少年」という扱いになるためです。
吉中教授
「保護を前提に考える、この大きな建前はあるんですけれども、18歳と19歳については、少し刑事裁判寄りにしましょうということで『原則逆送制度』というかたちで、一旦は家庭裁判所に送致されますが、強盗殺人というのはまさに凶悪な最も重いと言って良い犯罪類型ですから、18歳の少年2人については逆送される公算が非常に高いと思います」
18歳の2人は逆送される可能性が非常に高いと話す吉中教授。一方で、16歳の容疑者については、どうなるのでしょうか。
吉中教授
「16歳の少年がどういう役割を果たしたのか、実際に殺害行為を直接したのか、それともそこで見ていただけなのかといったことが、今後の捜査によって明らかになれば、それによって逆送されるかどうか、刑事裁判になるかどうかというのが決まってくると思います」
犯罪への関与の度合いが逆送されるか否かの判断材料になると指摘します。逆送された場合、その後は通常の刑事事件と同様の流れになります。検察が起訴するか否かを判断し、起訴された場合は、刑事裁判で有罪か無罪か、また有罪の場合には量刑が決まります。
ひとりの尊い命が失われた凶悪事件。まだ容疑者の3人の認否や供述は明らかにされていません。事件の今後の行方が注目されます。