「こちらがですね、新発売になるオリオンザプレミアムという商品になります」

先月、新商品を発売したオリオンビール。営業の現場では、那覇市内の飲食店で商品をPRするためのローラー作戦が展開されました。
オリオンビール営業本部 仲間大修課長補佐
「われわれ業務用営業に関しては、細かくお客様にアプローチするということと、結果にこだわった営業をするようにと、社長から話をされている」

2019年3月、オリオンビールは、野村ホールディングスとアメリカ系の投資ファンド・カーライルが合同で出資する会社「オーシャン・ホールディングス」に買収されました。
「オーシャン」は企業価値を高めた上で資金回収する狙いがあるとみられ、経営陣の刷新などを図り、オリオンの株式上場を目指します。
その期待を背負って去年、社長に就任した村野一(むらのはじめ)氏。ソニーやリコーを経て、ひげ剃り関連製品を手がけるシックジャパン社長を務めたてきた村野社長がオリオンで取り組んだのは―
オリオンビール 村野一社長
「オリオンビールに入って、いろんな人の話を聞いて。社員・社外の人。今までは必ずしも営業が目標を立てていなかった。目標を作って営業に配布していたんですね。私は営業が一人一人、担当法人と自分が売る商品の積み上げを1年分やってもらって」
村野社長の取り組みの一つが、営業担当自らに売上目標を設定させること。
営業担当の主体性に期待して、“現場”とコミットすることでリアリティがある目標設定が
出来るようになったといいます。

また居酒屋などに商品を届ける代理店にはアンケート調査を実施。“新商品発売を知るのはいつか?”という設問からは多くの代理店がFAX等で知っていた実態が判明。商品の搬送頻度についても、“現在の回数では適切でない”と答える声が。
一つ一つの課題を“可視化”し、改善に向けて取り組んでいるといいます。
株式上場と共に、オリオンの課題となるのが酒税軽減措置からの脱却です。酒税軽減措置は沖縄の本土復帰に伴う措置で、県内で販売するビールの酒税は20%が軽減されていますが
4年後の廃止が決まっています。
オリオンビールの発表によると昨年度の県内のビール類売上は前年度に比べて4.8%減少。
一方で、全体の売上高は165億6800万円で前年度よりおよそ9億円の増収となっています。
この増収の要因こそが“海外販路”。国外へ市場拡大こそが盤石な経営基盤をつくるカギとなると、新旧のトップは口を揃えます。


オリオンビール 嘉手刈義男会長
「少子高齢化によって毎年毎年ビールは売り上げが減ってきます。それで海外に目を向けたわけです。第二創業は海外に人脈が沢山あるわけです。そういった人脈を生かしながら、2段ロケットみたいな形で」
オリオンビール 村野一社長
「特措法があるおかげで、台湾、香港、アメリカなどに、オリオンビールを紹介することが出来ました。今後の伸びしろがとても楽しみで、勝ち筋が出来たと思う」
第一創業から第二創業へ引き継がれ強化されてきたという海外販路拡大。オリオンの展望を琉球大学の獺口教授は次の様に評価をします。
琉球大学 獺口浩一教授
「ビール市場は国内の市場が今後成長しないことが見込まれますし、縮小の可能性もあります。海外の市場を獲得していく流れは自然な流れだと思います」
さらに第一創業時には見られなかった“新たな企業像”を期待します。
琉球大学 獺口浩一教授
「買収というのは非常に大きなきっかけ、好機ととらえることが大事で。市場への対応力を身につけていくと思いますので、沖縄の企業が国外に出ていくためのロールモデルのような形になればと期待している」


オリオンビール営業本部 仲間大修課長補佐
「会社としてはやはり頑張った人間がより評価される。以前に比べるとはっきりしたんじゃないかな」
オリオンビール営業本部 宮城義人課長補佐
「競合は年々多くなってきているので、その中でどう商品を目立たせるか。思考をこらしながら、展開できればと思っています」
上場後も市場に対応できる企業へと変貌できるのか。第二創業の手腕が試されています。