那覇市大嶺地区に伝わる伝統行事「地バーリー」。毎年旧暦の5月4日、ユッカヌヒーに行われ、豊漁と海の安全、そして集落の無病息災を願います。180年の歴史があり、那覇市の指定無形民俗文化財にも指定されています。

他の地域と違うのは、海の上ではなく、地上で舟を漕ぐ珍しいスタイルです。取り仕切るのは、保存会会長の赤嶺大貴さん(34)。20歳のころから携わってきました。



▼赤嶺大貴 会長(大嶺地バーリー保存会)
「大嶺の浜がハーリー、ユッカヌヒーは大潮の干潮にあたり、潮が引いてとても遠いところでハーリーを漕ぐことしかできなかった。集落の皆さんに見せることができないということで、沖合いでハーリーを行い、砂浜に帰ってきて、地バーリーを披露したというのが始まりといわれています」

ふるさとは那覇空港の中 地域をつなぐ地バーリー



かつて漁業で栄えた大嶺地区は、現在では那覇空港となっている一帯にありました。しかし戦中に、飛行場建設のために土地を追われた歴史があります

約50年前に撮影された貴重な映像には、戦後一度だけ行われた旧大嶺地区でのハーリーの様子が記録されています。



3艘のハーリー舟を浮かべて勇ましく櫂を漕ぎ、最後に浜の上で地バーリーを演舞。大人も子どもも熱狂しています。時を経て地バーリーは公民館で行われるようになっていきましたが、漕ぎ手の熱意は変わりません。

本番のおよそひと月前から週に1度の練習を重ねてきた保存会メンバー。演舞する18人で、鐘打ち、船頭、謡い手、漕ぎ手、小旗とそれぞれの役割を担当します。

鐘打ちの赤嶺さんのこだわりは……。

▼赤嶺大貴 会長(大嶺地バーリー保存会)
「実際に舟の上で叩いているかのように、いかにお客さんに感じさせられるか」



▼子どもたちに指導する赤嶺会長
「シーモーヤー、シーモーヤー、シーモーヤー」
「息が合っていないよ。急に変えたら後ろの人びっくりするよ」

▼赤嶺大貴 会長(大嶺地バーリー保存会)
「大嶺の伝統行事の楽しさというのを知ってもらって、この子たちが中学生、高校生、大人になった時に自然と公民館に足が向かって伝統行事に携わる。そういったことを目指していきたい」



▼大城譲 カメラマン
「懐かしいですか?」
▼数十年前 地バーリーに参加していた女性2人
「思い出すよ」
「見たよウチの舟も出てる」
「私も小旗をふった」

昔話に花が咲き、ハーリー唄まで歌ってくれました。

そしていよいよ本番です。演舞の時間は約14分。練習で培ったチームワークで櫂を揃えて漕いでいきます。

最後は勝利を告げる踊りで締めくくりです。

▼地バーリーを見た人
「今日は素晴らしいですよ。大嶺は団結が素晴らしい」
「将来、子どもたちにもずっと続いていくように大切な伝統を守っていきたいと思いました」


▼赤嶺大貴 会長(大嶺地バーリー保存会)
「実際に舟の上で叩いているかのように、いかにお客さんに感じさせられるか。会場にいらした皆さんからの盛大な拍手が、とても嬉しかったです。まだまだ先輩たちにはかなわないと思いますが、いずれ追い越すという気持ちでこれからも頑張っていきたいと思います」

陸の上でエークを漕ぐ大嶺の男たち。未来への力強い船出です。