2021年に自ら命を絶った、沖縄県立コザ高校の男子生徒の遺族が、県に対して損害賠償を求めていた裁判は、8200万円を支払うことで県との和解が成立した。しかし遺族の前にはまだ、全国の同様の事案でも当事者たちを苦しめている「法律の壁」が存在する。

▼遺族コメント
「元顧問は公務員であることで個人責任を問うことができないという、法の壁に苦しみました」「県には、元顧問に対して、求償権を行使することを強く求めます」

コザ高校の男子生徒(当時2年)が自殺した問題は、第三者再調査委員会によって生徒が所属していた空手部顧問(当時)による「理不尽かつ強烈な叱責」が自殺の原因だと結論付けられている。

しかしその賠償責任は、「顧問個人」ではなく「県」に対してしか問えない「法律の壁」が遺族の前に立ちふさがってきた。国家賠償法の規定では、公務員が職務上の行為で他人に損害を与えた場合、その賠償責任は、個人ではなく国や公共団体が負うものとされているのだ。

専門家はその理由をこう解説する。

日本大学大学院危機管理学研究科(行政法)鈴木秀洋教授


▼日本大学大学院危機管理学研究科(行政法)鈴木秀洋教授
「なぜこの規定があるのかっていうと、やはりその公務の特殊性にあります。例えば消防活動や災害の救助、又は虐待対応で家庭に踏み込まなければならない場面で、個人として訴えられてしまうとなると、“萎縮してしまう”、積極的な公務活動ができなくなってしまうんですね。その意味で、国家賠償法の組織責任規定は全ておかしいとは思いませんし、この規定は必要」

しかし鈴木教授は、コザ高校の事案に関しては、国家賠償法の1条2項が規定する「求償権」は当然行使されるべきだと語る。