4年前に大分市で起きた時速194キロの車による死亡事故をめぐる刑事裁判の控訴審が29日から始まりました。一審判決で認められた危険運転についてが焦点となります。
2021年2月、大分市で当時19歳の男が運転する時速194キロの乗用車が右折してきた車に衝突。小柳憲さん(当時50)が死亡しました。

最大の争点は「危険運転が成立するか」。一審の大分地裁は「制御困難な高速度」に該当するとして、検察側が主張した危険運転を認め、懲役8年の実刑判決を言い渡しました。
一審判決に対し刑法に詳しい松山大学法学部法学科の明照博章教授は「直進だけで裁判所としては、制御困難型の危険運転が認められないので、付加的事情をかなり積み上げていってギリギリ高裁に上がっても、維持してもらえるかもしれないと念頭に置いて変えたのかなと思う」

検察・弁護側の双方は判決を不服として控訴しました。小柳さんの姉、長文恵さんは「求刑通りせめて判断してほしいと思います。相手に重い罪を科すだけが目的なわけではなくて、今後の抑止になるような判決を求めてる気持ちの方が大きいです」
一審判決からおよそ10か月が経ち、福岡高裁で控訴審が始まりました。弁護側は「車は直進できていて、制御困難な状態には当たらない」などとして過失運転致死罪の適用を主張しました。
一方、検察側は高速度での走行による「危険性」は明らかで、一審判決が認めた危険運転の成立は妥当として控訴棄却を求めました。また、検察側は一審で認定されなかった妨害目的の立証を求めて、証拠2点と証人尋問を請求しましたが、いずれも棄却されました。

控訴審初公判のあと、遺族が会見を開きました。
小柳さんの姉 長文恵さん:
「被告が出廷せず、この事件に真摯に向き合っている姿を見ることができないので、非常に残念に思いました。この裁判は今後の量刑の基準にもなるので、量刑が適切かどうか、そこの議論も含めて判決で高速度類型の限界を見るのかどうなのか。また苦しい時間が続いていくのかという気がして裁判を終えたところです」
裁判は結審し、判決は来年1月22日に言い渡されます。