悲惨な戦争を体験した夫の遺志を受け継ぎ、絵を描き続けている女性がいます。作品には、夫婦二人三脚で訴えてきた反戦への思いが込められています。
大分市の新井川久恵さん81歳。二期会の準会員として長年にわたり絵を描き続けてきました。11年前に亡くなった夫の言葉を思い出しながら、一筆一筆、描いていきます。
久恵さん:
「目も薄くなりました。おんなじ物を見たりね。年をとると前に進まない」
久恵さんの夫・勝さんは戦後8年にわたり、中国に抑留され、多くの人の死を目の当たりにしました。

勝さん(当時74歳):
「戦争はものすごく悲しいもんですよ。人間の命なんてチリやゴミと同じように扱われるんです」
大分市が爆撃された1945年4月の空襲では、動員学徒18人が死亡。この中には弟の勝郎さんが含まれていました。14歳でした。勝さんは生前、悲惨な体験を伝える自分史をまとめました。戦地の挿絵は話を聞いた久恵さんが想像して描いたものです。

久恵さん(当時58歳):
「戦争の厳しさ、そういうものを描きながら身近に感じた」