85歳を過ぎ、末期がんと宣告された勝さんは、死の直前まで平和の尊さを伝える個展を開くなど、夫婦二人三脚で反戦を訴えてきました。

勝さん(当時86歳):
「このままむざむざと死んでしまっては申し訳ないと思って、気力を奮い立たせて頑張るつもりです」

病床の勝さんが見守る中、久恵さんが描いたのは桜の絵。空襲で亡くなった勝郎さんら動員学徒への思いが込められています。勝さんの死から11年。久恵さんは平和の尊さを伝える役目を引き継いでいます。

久恵さん:
「戦争は絶対してはならないからそれを皆さんにずっと伝えてくれということで背負って歩いております」

80年前の空襲で亡くなった弟・勝郎さんの命日を前に、久恵さんは個展を企画しました。

久恵さん:
「戦争で亡くなった人たちにゆっくりお休みなさい、戦争をやめてくれ、してはならないと祈りながら一生懸命描きました」

8年にわたる抑留で多くの命が失われていく中、奇跡的に助かった勝さん。86歳で命が尽きるまで懸命に生きた夫の思いを胸に久恵さんは反戦を訴え続けます。

「絵を描くたびに主人と一緒に描いているような感じでね。天国では私がこうやって展示会をしているのを喜んでくれていると思います」