「世界のニナガワ」との出会い

安部さんはかつて競輪選手を目指していましたが、その夢を諦め、映像制作に携わりたいという思いから25歳の時に上京します。しかし、現実はガソリンスタンドでアルバイトに励む日々でした。

上京当時の安部賢一さん

そんなある日、世界的に有名な演出家の蜷川幸雄さんと出会います。客として洗車に訪れた蜷川さんから「兄ちゃん普段何やってるの?」と声をかけられ、安部さんは、「映像の仕事がしたくて九州から出てきました」と答えます。さらに「兄ちゃんもったいないな。何かやれよ」という蜷川さんの言葉に背中を押され、俳優としての道を本格的に歩み始めました。

その後、数々の映画やドラマに出演してきましたが、転機が訪れたのは、競輪をテーマにした映画『ガチ星』でした。2017年に公開されたこの作品で、安部さんは、自分の人生と重なる崖っぷちの主人公を演じ、40代にして初めて主演をつかみました。

©空気/PYLON

安部賢一さん:
「もう辞めようと決意した時、最後の最後のチャンスに『ガチ星』という作品に出会えました。そこから様々な作品に携わることができたんです」