「わたしはあなたを許さない」

被告にバールで殴られ、左目に後遺症を負った元店員の男性(当時48)の意見陳述では、最初に「私はあなたを許さない」という強い言葉が発せられた。
男性は父が経営していた理容店を続けるため、借金を抱えながら、10年以上前からコンビニで週5日、夜間勤務も行っていた。「被告がギャンブルで借りた金は(私の)事業返済額に遥か及ばない額」被告が起こしたことは「幼稚で浅はか。最大限の刑罰を」と述べた。

また、自身の後遺症について「左目(の視野)にはラグビーボールのようなもやがかかっていて回復する術がない。毎朝起きたら何も見えなくなってるんじゃないかと不安になる。涙と嗚咽が止まらなくなったこともあった」と言葉を詰まらせた。
さらに自分の人生を壊されたことに加え「働いていたコンビニのお客様に凶器を向け、大けがをさせたことは極刑に処されるべき」「(被告は)一生お客様への謝罪を続けろ」などと峻烈な処罰感情を表した。

男性は意見陳述中、一度も被告に目をやることはなく「加害者であるあなたは私の人生に必要のない人。償いが続く人生をただ生きていけばよい」などと述べた。

「強盗しようや」「強盗するしかない」量刑のポイントは“計画性”

裁判のポイントは量刑(被告人に科すべき罪の重さ)となっている。検察側は、幼馴染などとのSNSでのやりとりを示し「強盗」という言葉がでていることや、事前に目出し帽などを準備していることなどから「緻密とは言えないが、相応の計画性があったのは明らか」と主張した。

検察官:(幼馴染に)強盗をほのめかしていたのではないか?

旧知の中で、あくまで冗談のつもりだった。

──事件の数か月前からコンビニを狙おうと考えていたのではないか?

考えたのはあくまで前夜。

──やるかは別として考えもしなかった?

ないと思う。

──2022年10月25日、幼馴染との間で「強盗しようや」という連絡記録も残っているが?

記憶がない。

──2023年1月、借金をしていた知人へ「金を貸してもらえないならもうコンビニ強盗するしかない」と言ったという証言を知人がしているが?

1月にも借金をしていたが、言ったのは4月頃だったと思う。切羽詰まって犯罪をほのめかせば金を貸してもらえると思った。

裁判員:冗談のつもりでも、なぜ「強盗」と言った?

2022年に職場の先輩がパチンコで負けたとき「強盗でもしようかな」と言っていた。そこからワードとして残っていた。それ以上の意味はなかった。自分が実際にできるとは思ってなかった。