ゴールデンウイーク明けに新型コロナの感染法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行されますが、これを前に政府は、海外からの水際対策を4月29日をもって終了しました。インバウンドの需要回復へ、この大型連休は旅行業界にとっても重要な局面となります。こうした中、旅行先に金沢を選んだ外国人観光客を取材しました。


天候にも恵まれた2日の金沢市内。観光名所・兼六園では外国人旅行客の姿が目立ちました。

リトアニアからツアーで来た女性
「リトアニアにも日本庭園はあるけど小さいので、天然の大きな庭園を見たくて来ました」

イギリスから来たカップル
「きのうは茶屋街や武家屋敷へ行きました。東京を旅行した時は忙しなかったので今は落ち着いて観光できています」


アメリカから来た家族
(Q.金沢を一言で表現するなら?)「穴場」ですね。京都と比べても金沢は文化や歴史を感じられるので良い。まちなかも混みすぎていないしね」


一方、金沢が生んだ仏教哲学者・鈴木大拙(すずきだいせつ)の功績を紹介する鈴木大拙館。


スイスから家族と来た男性
「2年前から日本に住んでいて家族がしばらく遊び来ているんです。鈴木大拙館はとってもキレイ建築を見たくてここに来ました」

オランダから来た男性
「しばらく中を歩いて建物のつくりを観察していました。武家屋敷で見た池とお花との組み合わせが好きです」


2019年度には過去最高となる年間およそ7万9,000人が訪れていましたが、コロナ禍での休館が影響し、2021度の来館者数は3分の1にまで激減。一方で、水際対策が段階的に緩和された昨年度は5万4,000人にまで持ち直しました。


鈴木大拙館・羽場伸矢副館長
「2月の後半から3月、4月とみると半分以上が外国から来ています。静かに建物のなかを散策して『ありがとう』と言って帰られます」

国の特別名勝「兼六園」もインバウンド回復へ

「兼六園」を訪れた外国人を国・地域別にまとめてみました。

兼六園の外国人入園者数

コロナ禍前の2019年は合わせて47万人余りの外国人が訪れていましたが、このうち3分の1以上は台湾からの観光客が占めていました。2023年1月から3月までの数字を見ても、台湾が突出して多くなっています。4月には台北・小松間の直行便も再開し、比較的距離が近い海外とあって人気が高いようです。

コロナ禍はゼロの時期もあったがインバウンドですが、徐々に回復基調となっていて、石川県によりますと、このままでいけば兼六園は今年23万人余りと、コロナ禍前の半分程度の外国人が訪れる見込みです。

人気が高まる金沢ですが、外国人は何に惹かれて訪れるのでしょうか?

なぜ人気? 鍵は「金沢ならではの魅力」と「立地の良さ」

ひがし茶屋街近くで、伝統工芸品のセレクトショップ「かなざわ 美かざり あさの」には、アメリカ・ミシガン州から訪れた3人家族の姿がありました。

スタッフから金箔貼りを教わるアメリカ人家族=金沢市東山の「かなざわ 美かざり あさの」、2日午後

日本全国をめぐる2週間のツアーで訪れという3人が選んだのは「金箔貼り」。金沢ならではの体験とあって、特に欧米からの旅行客には好評のようです。

一方、3年前に金沢市中心部の南町にオープンした金沢中央観光案内所にも、盛んに外国人が訪れていました。窓口のスタッフは全員外国語が堪能で、観光地や食事のほか「ポストカードはどこで買えるか?」「海を見に行きたい!」など、さまざまな問い合わせに対応します。

アメリカから来た観光客に答えるスタッフ=金沢市南町の金沢中央観光案内所、2日午後

近くに設置されていた銅像の由来を聞きに来たというアメリカからの観光客は「いつも聞きたいことがあるとここに来る。みんな親切に答えてくれる」と話していました。

重信敦志所長は「白川郷まで行きたいとか、広島まで行きたいとか、中には九州まで行きたい方もいる」と、相談内容は北陸に留まらないといいます。

金沢中央観光案内所の重信敦志所長

そんな中で、外国人はどうして金沢を旅行先に選んだのか? アメリカからの観光客は「レンタカーで日本全国を巡っている。きょうは長野まで行く」と話し、リトアニアから訪れた女性は「東京・京都、そして金沢に来た。金沢は2日間だけ」と話すなど、経由地として金沢に訪れる観光客が多いようです。

金沢中央観光案内所の重信所長も「金沢も目的地の1つ。全国かなり広範囲で回っている。金沢はルート上で比較的立ち寄りやすい位置にあるので選ばれる」と分析します。

ひがし茶屋街を散策する外国人=金沢市東山、2日午後

金沢ならではをアピールし、国内の観光地の中でいかに存在感を高めていくか。これからのインバウンド需要の取り込みの鍵となりそうです。