特集です。
被災地の木材でギターをつくるプロジェクトが、全国のミュージシャンの注目を集めています。
なりわい再建が遅れる能登の林業、行き場のなくなった古材、震災の記憶を楽器に込めて次の世代に受け継ぐ取り組みを取材しました。

90年代のファンクロック界を牽引してきたバンド「THEATRE BROOK」のボーカルギター、佐藤タイジさんです。
日本武道館などでも演奏してきた佐藤さんのこの日のステージは・・・

穴水町にある能登森林組合の会議室。能登ヒバで作ったギターのお披露目ライブです。

去年4月、このギターのために能登森林組合の職員が伐採したのは、樹齢108年の大木です。
佐藤さんは、石川県の県木「能登ヒバ」を使ってエレキギターをつくりたいと、輪島市の森林を訪れていました。
切り出された木材は、兵庫県のギターメーカー「Sago」のもとに送られ、およそ半年かけてギターが完成しました。
◎佐藤タイジさん
「♪ジャン~ あ~すばらしい」「アテの木でこんなに素晴らしいギターができるなんて」
職員は、自分たちが育てた木が楽器となってアーティストの手にわたり、音になる瞬間を初めて目にしたといいます。

◎能登森林組合 徳田尚貴さん
「自分が切った木が求めているひとにバトンを渡す形になったこと、素直に嬉しいなと思います」
被災地の林業は、担い手不足と林道の復旧が遅れていることなどから生産量が震災前の半分以下に落ち込んでいて、再建の見通しが立たない状況が今も続いています。
◎ギターメーカー「Sago」
「木を切るのをやめられたら困る」
◎佐藤タイジさん
「あかんあかんあかん」
◎職員
「そういってもらえるとモチベーションあがりますね」
◎Sago
「ワンチームで頑張っていきましょう!」
被災した森から音楽を届けるー。
仕掛け人は、金沢市で木材販売会社を営む、古谷隆明社長です。

古谷さんがこれまでに製作した楽器は30種類以上。
◎フルタニランバー・古谷隆明社長
「音楽に着目したのは、みんなにとって身近だし、音楽の力は人を繋ぐ力だと思っている。音楽の力を通じて木のこと、能登のこと知ってもらえたら」
主に建築材として使われる能登ヒバですが、楽器メーカー「ヤマハ」が音響などを検証した結果、「楽器材として十分に適用可能」と評価されました。

そして、また一人のアーティストが。

東京から輪島市の古材倉庫を訪れたのは、ギタリストのHIROTOさんです。HIROTOさんは、ビジュアル系ロックバンド『アリス九號.』のメンバーとして活動。
今年4月にはいしかわ観光特使を委嘱されたアーティストです。
◎HIROTOさん
「能登、石川県は10代の頃に初めてバンドで初めて来たときからすごく好きで」「(地震で)それまで営みがあったところが、姿が変わっちゃって、何かできないかなと思って」

HIROTOさんは、古谷さん、そして佐藤タイジさんのギターを手がけたメーカーとタッグを組んでギターを作ります。使うのは、ボランティア団体「のと復耕ラボ」が解体家屋から救出した行き場がなくなった「古材」です。
◎HIROTOさん
「これよさそう、響きが。ビンテージのサウンドがします」
HIROTOさんの目に留まったのは、能登ヒバの古材。

持ち主は、輪島市の寺の住職でした。
◎古材レスキュー・江崎青さん
「地震で寺の構造が歪んで、これ以上使えないと解体する選択をした。代々受け継いできたお寺だったので。誰かに活用してほしいという想いで連絡をくれた」
◎HIROTOさん
「このプロジェクト素敵じゃないですか。この土地で育った木を、この土地の人が加工して建材として使われて、この場所で過ごしてきたものがまだまだ生き続けられるし、美しい形になって復活できるといい」
2時間かけて選んだのは、300年以上の歴史がある輪島市「信念寺」の古材。
◎HIROTOさん
「なんかこの土地の風土が感じられるギターになりそうですね」
続いて訪れたのは輪島市三井町にある「のと復耕ラボ」の拠点です。
◎江崎さん
「解体した家の家主さんです」
「どうもこうしてみると このへんに生きている人物じゃないですな(笑)」

輪島市の山浦芳夫さん。
山浦さんの自宅は地震の影響で中規模半壊となり、おととし公費解体で出た古材を「のと復耕ラボ」に託しました。
山浦さんは、かつて自宅があった場所を案内してくれました。

◎山浦さん)
「3代かかって 5~60年かかってひとつの家ができる」
「(家を解体して)僕は非常にさみしい とっても心がさみしいです」
「苦労して何十年かけて生活してきた家が、ある瞬間に無くなってしまう。なんとか形を残したいと」
愛着のある我が家が新しい形で残っていてほしいー。
HIROTOさんは更地となった山浦さんの自宅跡で、その想いをかみしめます。

◎HIROTOさん
「ただの木材なんかじゃなくて 人の歴史そのもの、場所の歴史そのもの」「またここから頑張っていこう 次世代に伝えようと 熱い思いを伝えてもらって」「僕は僕の出来ることで音に乗せてその想いを語り継いでいく」
佐藤タイジさんが能登森林組合で開いた特別ライブにはHIROTOさんの姿もありました。

◎HIROTOさん
「能登の震災で起こった悲しい出来事を逆にわくわくするものに、タイジさんが演奏されて皆さんわくわくしたと思うけど、そういうムーブにしていきたい」
◎佐藤さん
「できるといいですよね、悲しい出来事かもしれないけど前進するきっかけになるもんね、きっかけにしないと意味ないもんね。頑張ってやりましょう」
◎HIROTOさん
「よろしくお願いします」
◎佐藤さん
「いいギター弾こう 心を込めてギターを弾こう」

林業が窮地にある能登の木材、行き場を失った被災地の古材、能登ヒバは新たな命を吹き込まれ、次の時代に受け継がれます。











