甚大な被害から憩いの場へ
9/21の奥能登豪雨発災以降、町野町では通信障害が続き、安否確認が取れない状況が続いていました。
私の元にもたくさんの方から、被害状況の確認や安否確認の連絡が届き、9/23頃まで昼夜を問わず対応を続けていました。
ご実家が土石流の被害を受けたAさんのお話を、時系列でご紹介させていただきます。
発災当日は、21:00頃に一瞬だけ電話が繋がり、「大丈夫よ! 車の中!」とだけ聞くことができ、ご両親の無事を確認出来ました。
その翌日の9/22夕方、道の啓開がなされたことで、ご両親はAさんの家まで避難することができました。
のちの話で、ご両親は災害発生の直前に、近所の人から「前の崖が崩れてきてるけど大丈夫?」と電話があったおかけで、車で避難することが出来て助かったことがわかりました。
土石流の直前には、非常に泥臭い臭いが辺りに充満、斜面からは大量の泥水が流れ出していたといいます。これらの現象は、土砂崩れの前ぶれと言われているのですが、まさにその通りだったと、ご両親が振り返られていらっしゃったといいます。
もしも、この近所の方からの連絡がなければ、酷い雨ではあったものの、外の様子見ようとは考えもしなかったとのことですので、本当に奇跡的な連絡を受けたのだと思いますと、Aさんは語ります。
Aさんがご家族とともに実家に行き、被害を目の当たりにしたのは、9/26のこと。
被害を受けたご実家は、玄関先から大木が一本家の中に突っ込んでいる状態で、一階の床は泥まみれ、道路側の玄関、台所、お風呂の壁は破られるという甚大な被害を受け、想像以上に酷い状況でした。
土砂を出すにも、家の破損状況を確認しようにも、この大木がネックで思い通りに動くことができないため、Aさんとご家族は、すぐにボランティアを頼り、市のボランティアセンターに大木撤去を依頼しました。

10/2には重機を扱える災害ボランティアさんにより、家の横や玄関前の土砂の撤去を開始されました。大木を家から除去しようにも、家の周りに土砂が押し寄せていたため、まずはその撤去が必要でした。
10/3にAさんたちが片付けに戻った際には、家の横の道路で、災害ボランティアの方が重機で土砂の撤去作業をされているところでした。Aさんが災害ボランティアさんに、ダメ元で家に突き刺さった大木の状況を見ていただいたところ、撤去してもらえることになり安堵しましたが、翌日の作業で大木が屋根を支えていて抜くことができなかったため、残念ながら大木の撤去は延期となりました。
大木はそのままではあるものの、10/6には、キッチン回りの土砂がよけられていて、そこから家の中に入ることができるようにしてくださり、Aさんご家族は、ボランティアの方々が寄り添ってくださる姿に感動したといいます。
しかし、家を貫いてしまっている大木は、大きなネックになっており、雨漏りや流入した土砂の影響で家屋の傷みが進んでいました。そのため、大木回りの泥や土砂を運び出すなど、少しでも動きやすくなるように、Aさんは自分たちでも出来ることを続けました。
避難生活を続けながら週末に片付けに戻る作業を続けていた10/7には、災害ボランティアさんが顔を出してくださり、「今はまだ途中だけど、雨がやんだら改めて対応するからね! 留守でも入ってやるからね!」と、嬉しい声かけをしてくださいました。
10/13には、撤去できないかもと諦めかけていた大木が、遂に撤去されました。
なくなった柱の部分は別の大木でささえ、屋根を残して大木と土砂が撤去されていたその姿に、Aさんもご家族も、とても感動されたといいます。
家の周りの土砂も、発災後からは見違えるほどに片付けられました。

作業によって片付き始めた家を見たときは、「本当に感動しました」と、大変喜ばれたご様子で私にも報告をいただき、本当に有り難い思いでお写真を振り返りました。
市のボランティアセンターさんからも、その後、報告の連絡が入りました。
道路の土砂撤去作業中の重機の扱いが出来る災害ボランティアさんに、無理を承知で声を掛けたことがきっかけで、早い時期にここまで修復できたことは奇跡だと思っていますと、Aさんは当時の気持ちを語ってくださいました。
ようやく本格的な作業に入れるようになったご実家で、その後は廊下や和室の泥出しを進め、浸水した畳もあげることが出来ました。
発災から2週間以上経っていたこともあり、カビや腐食で大変なことになっていましたが、ボランティアの方が天気の良い日は開けて風を通して乾かしてくださり、広域避難中も作業を続けてくださいました。
畳を上げた時は、かなりの悪臭が漂っていたとのことでしたが、この日中窓を開けて風を通すというきめ細やかなお気遣いを頂いたおかげで、その後は臭いも減り、作業も格段に進みました。
ボランティアのみなさまやご家族のご尽力もあり、片付けはその後も進み、いつもくつろいでいた居間が、また皆さんで集まれる場所になりました。
ライフラインも一部復旧し、テレビやエアコンなども復旧している様子が窺えます。
今回の記事を書くにあたり、当時のやりとりを振り返りましたが、ボランティアのみなさまが親身に寄り添ってくださったおかげで、家が片付くにつれ、どんどん明るい雰囲気が感じられました。
笑顔でご尽力いただくその姿に、たくさんの元気をいただいたことと思います。

11月には、もとやスーパーさんより譲って頂いた畳も敷かれ、とても素敵な憩いの場が戻ってきたように思います。
「座ってくつろげる場ができた」とご家族も喜んでいるとのことで、本当に有り難い限りです。
こうしてたくさんの方に支えられながら、町野町の至るところで少しずつ立ち上がっているお姿を見かけます。
寄り添い、支え合い続けてくださるボランティアのみなさま、全国から支援に駆けつけてくださるみなさまのおかげです。本当にありがとうございます。