里山の魅力に引き込まれる

あれは夏の終わりの夕方だった。矢波浄水場の更新に向けた提案を行うため、羽田を飛び立ち、初めて能登空港に降り立った時のことだ。
オレンジ色に染まる、どこか懐かしい里山の風景に、妙に心を打たれた。そして、能登の人たちと言葉を交わしていくうちに、それまで気ぜわしく、ざわついていた心が落ち着いていくのを感じた。何気なく入った食堂で振る舞われた料理は、びっくりするくらい美味しかった。能登は魚醤が有名で、多くの種類があるのだと教えられた。
「能登はやさしや土までも」
これは、能登の人は素朴で温かくだけでなく、その土地までも優しいという意味で、能登という土地柄が、そう表現されるのだと聞いた時、妙に納得した。そして記者は、能登の”ファン”になった。仕事に疲れたら、能登に用事を作って、出張をするようになった。