慎重に厳格に進められる”大きな買い物”

1日に5,000トンの飲料水を作ることのできる浄水場更新となると、その規模は相当に大きなものとなる。何千万円もする高価な装置がたくさん必要になるなど、総額は10億円を超える。町にとっても、数十年に一度の大きな買い物となる。

当然に、そのための業者や装置などの選定は慎重に行われる。役場の担当課は入念に情報収集し、専門知識を持つ設計コンサルタント会社がその助言を行う。それに対してプラントメーカーはプレゼンを実施し、技術的な説明資料の提出を重ねていく。そんな形で何年もかけて、導入すべき装置の候補が絞り込まれていく。

「薬品注入の制御条件が見えない。これでは国の定める基準を満足できるとは思えないが」

宮内さんは、とても厳格な技術者だ。メーカー側が製品の性能を謳うプレゼンを行うたび、些細な点にまで鋭い指摘が向けられる。技術的な裏付けに基づいた回答を、徹底的に求められる。胃の痛くなるようなやり取りが続く。

季節は関係無かった。緑したたる夏も、一面が雪に覆われてモノクロの世界になる冬も、石川へ、能登町へ、何度も何度も通った。