今年22歳になった山田空暉。
高校を卒業してすぐに愛媛にやってきた4年前、その名前はすでに全国の高校野球ファンには知れ渡っていた。
特に「甲子園」での1球はとても印象深い。
2022年夏の甲子園2回戦、ベスト8をかけた一戦。
5対5の同点で迎えた9回表、愛工大名電のマウンドには山田空暉がいた。
2アウトランナー無し。
迎えるは前の打席、センター前タイムリーヒットを放っている3番打者。

「カーブのサインが出ていて、バッターも打ち気だったのがわかったので」

そして「初球」
甲子園が止まった――。

山田が投じたボールは、まるでネコの背中のように山なりの弧を描き、真夏の熱気をゆるゆると纏いながら「スポッ」とキャッチャーミットに収まった。

「ストライク!」

〝超”がつくほどの「スローカーブ」。
バッターは固まり、スタンドは前のめりになり、スコアボードにはスピードガン表示なし。おそらく測定範囲をボールの軌道が大きく外れたため計測できなかったのだろう。


「嬉しかったですね。ストライク取れて」

甲子園の緊迫する場面で投じた大胆過ぎる〝超遅球″。
それは山田が公式戦で初めて投げた会心の1球だった。