ミラクルエイトに沸くファン~打撃編~

阿部寿樹選手
ここ数年の大きな課題である打撃陣。2021年シーズンは、チーム打率リーグ最下位、ホームラン数と得点はリーグ最下位どころか12球団最下位だった。立浪監督は就任会見で「打つ方は必ず何とかします」と力強く語ったが、「必ず」という決意は形として表れている。監督自ら直接、各選手に打撃指導をする姿もすっかりおなじみになった。ここまでチーム打率.254と得点数83はリーグ3位、ホームラン数16本は4位。数字もそうなのだが、何より「打っている」という印象が残る。4月24日のジャイアンツ戦も序盤3回での5点差をはね返した。特に「ミラクルエイト」という言葉がいつしかファンの間でも浸透してきたように、終盤の8回に点を取っている。全83得点中、8回に挙げたのは20点と、粘り強い野球を見せている。レギュラーを期待された高橋周平選手がけがで出遅れたが、その代わりにセカンドに入った阿部寿樹選手の打撃が好調だ。勝負強さを含めて、ここまでの立て役者と言える。「あと1本が出ない」と嘆いた昨季までとは違う手応えを、ファンとしても感じている。やっぱり「打って点が入る野球」は観ていて楽しい。

将来の4番いよいよ覚醒へ~新戦力編~

石川昂弥選手
「チームは変わらないといけない。スタメンには新しい顔を使う」という立浪監督の言葉通り、開幕以来、先発メンバーには新しい顔が並び続けている。20歳の岡林勇希選手と石川昂弥選手、そしてルーキー鵜飼航丞(こうすけ)選手。中でも石川選手は、次第に「将来の4番」候補の片りんを見せ始めている。本拠地での初ホームランをドーム観戦で目の当たりにしたが、あの力強い弾道は、まさに竜の新時代への“祝砲”のようだった。ここ数年、いやそれどころか、2011年の落合博満監督の下でリーグ優勝して以降、10年以上もファンが待ち続けた“新しい風”が、ようやく竜打線にも吹き始めた。この風がさらに勢いを増すことに期待したい。

バンテリンドーム
ここまで、勝っても負けてもワクワクする熱いゲームが続いている。ひとつ残念なのは、未だ収まらないコロナ禍もあってか、本拠地バンテリンドームのスタンドにまだまだ空席が目立つこと。ドラゴンズの野球自体は、しっかり芯が通った納得できるものになりつつある。今こそ球団そしてドーム関係者も一丸となっていろいろなアイデアを出し、集客アップへ魅力を増すことに注力してほしいと願う。立浪ドラゴンズの野球には、満員のバンテリンドームが似合う。                                  

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。