高潮は堤防を越える?予測の最前線
国の研究施設で行なわれた「高潮」の実験。

8分の1スケールで本物と同様のコンクリートで作られた防潮堤に人工的に発生させた高波を繰り返しぶつけると、波が堤防を越えるだけではなく、基礎部分の地盤がえぐられるなどして、防潮堤が崩れ、大きな浸水被害を引き起こします。
(国総研海岸研究室 姫野一樹主任研究官)
「(高潮は)非常に長い時間水位が上がるような状態になるので、危険性が高い状況になる」
現在、高潮警報は、潮位の観測値と予測値を元に気象庁が発表しています。それでも、2004年の台風23号では、高知県室戸市で住宅が壊れるなどして、3人が死亡したほか、2018年の台風21号では、兵庫県芦屋市周辺で住宅の浸水が300棟に達するなど、高潮が防波堤を越えてしまい、被害につながるケースはたびたび起きています。
このため、国総研では、高潮予測の精度を高めようと「潮位」や「波の高さ」のデータを元に、海岸での「波の打ち上げ高」を予測する研究を全国およそ500地点で行っています。
(姫野さん)
「全国の海岸管理者さんからご協力を得て、海も含めた海岸付近の地形データを活用して打ち上げ高を算出している」
東海地方では、名古屋港や三河港など34地点で「波の打ち上げ高」を予測していて、高潮が堤防を越える予測が出たときは都道府県に情報を提供し、防災に役立てられています。

(姫野さん)
「最も外房に近いコースを台風が通ると、天端高を越えるという予測が出ていた」
先月、太平洋沿岸を北上した台風7号では、千葉県の南房総市で、高潮が堤防を越える予測が出ました。このときは、台風の進路がそれたため、実際に高潮が堤防を越えることはありませんでしたが、これまで、実際に堤防を越える被害が出た17回中11回は、「越える」という予測ができていました。
(姫野さん)
「今までに比べてタイムリーに、ある場所が危険になるという状況を、こういった予測を使えばもうちょっと(高精度に)出していける」
名古屋港では伊勢湾台風のあと、総延長7.6キロに及ぶ高潮防潮堤のほか、各地に防潮扉が設置されるなどこの65年でハード対策は進められてきました。



それでも常に「想定外」は起きうると伊勢湾台風を経験した長澤さんは、新しい高潮予測に期待を寄せています。
(長澤さん)
「高潮来るなんて全然想像していなかった」
Q今後わかるようになったら、台風の被害は減ると思う?
「減ると思う、だいぶ違うと思う」
「高潮」の犠牲者を出さないための高潮シミュレーション研究。気候変動で年々、台風が巨大化する中、その重要性は増しています。