“岐路”に立たされた『コメ王国』の「コシヒカリ」

コメの“需要”が低下していることに加え、全国各地でさまざまな「ブランド米」の栽培も進んで“産地間競争”も激化する中、さらに最近は夏が高温であるために品質が思いがけず低下することもあります。

「コシヒカリ」を巡るそうした最近の“傾向”を踏まえて新潟県では、暑さに強いコシヒカリの『新品種』を作ろうと開発に乗り出しています。

“DNAレベル”で始動した新事業

長岡市にある新潟県の農業総合研究所では7月にある研究が進められていました。

【新潟県農業総合研究所 アグリ・フーズバイオ 研究部 白矢武士 主任研究員】
「DNAを比較しながら、高温に強い配列を見出そうと研究を進めています」

高温に強い配列とは!ここでは現在、県内で生産されているコメの品種で7割を占めている「コシヒカリBL」に暑さに強い「高温耐性」を加える研究が行われているのです。
県は2021年からこの研究を進めてきましたが、今年度はおよそ1500万円の予算がつき、事業が本格的に始動しました。

新潟県農業総合研究所(長岡市)

1956年に新潟県の奨励品種に採用されたコシヒカリ。県内ではコシヒカリが主な品種として栽培されていましたが、稲が枯れてしまう「いもち病」に悩まされていました。そこで県はいもち病に強い「コシヒカリBL」を開発し、2005年から県内の主力ブランドとして栽培がはじまりました。しかしなぜ今暑さに強いコメが必要なのでしょうか。

【JAえちご上越の担当者】(2019年9月に取材)
「コシヒカリの上位等級の比率が過去に例を見ないぐらい。先週は一桁台」

2019年に実施されたコメの品質検査では県の主力品種「コシヒカリBL」の1等米比率が25%と例年よりおよそ50ポイント落ち込む事態となりました。

【県農林水産部の担当者】(2019年9月に取材)
「お盆時期のフェーン現象…」

夏に異常な高温となり、米粒が白くなったり割れたりする高温障害がおきました。