寛さんは岩手県陸前高田市出身。実家は180年の歴史を持つ『和泉屋本店』というみそ・しょうゆ蔵です。
大学で醸造を学んだ後、ゆくゆくは父の跡を継ぐつもりでした。

しかし、2011年の3月11日。
街は津波に飲み込まれ、蔵も家も消失。
父と祖母を亡くしました。

震災後、蔵の再建も叶わず、みそづくりを諦めていた時、一本の電話がかかってきました。当時、闘病中だった康代さんの母・和代さんからでした。
「もしよかったら、うちに来て一緒にみそ作りをやりませんか?」
和代さんは実習で来ていた寛さんのことが、特に印象に残っていたそうです。

藤井康代さん
「寛さんが『古いものの中に新しいものがある』と… その言葉を母は印象深く思ったらしいですね」