裁判の争点

今回の裁判の争点となっていたのは、男の「責任能力の有無」だ。初公判で検察側は、入院生活が嫌になり「人を殺して警察に捕まれば病院から出られる」などと考え犯行に及んだと指摘。これに対し弁護側は、精神鑑定の診断結果などから心神喪失状態だったとして無罪を主張した。

男は車いすのひじ掛けに肘をのせて、手を前にだらりと垂らしている。背もたれにしっかりと体重を預け、首猫背の状態で終始目線を下に向けながら、検察側の話も、弁護側の話も聞いていた。

裁判は進み、証拠調べに入る。
検察側は事件現場の詳しい立地や院内の見取り図、病室の状況などを写真を交えて説明した。その後、当時の様子を看護師へ聞き取った「聞き取り調書」の内容を淡々と読み上げていくのであった―。