「妄想」と「責任能力」争点はどう判断されたのか

 最大の争点は、青葉被告の”京アニに小説をパクられた”という「妄想」が、犯行にどの程度影響したかだ。

 青葉被告を精神鑑定した2人の医師のうちA医師は、「妄想の影響は限定的」という診断結果を示し、B医師は「重度の『妄想性障害』で、犯行には妄想の圧倒的な影響があった」と示していた。

 結論から言うと、京都地裁は「青葉被告は心神喪失の状態にも心神耗弱の状態にもなかった」と責任能力を認めたが、意外だったのは、鑑定結果についてはB医師の「妄想性障害」を支持した点だ。(A医師の鑑定結果は「検討が十分になされているとはいい難い」と一蹴されている)そしてこう結論づけられた。

 「妄想性障害は、京アニへの強い恨みという犯行動機の形成には影響した。ただ、放火殺人という手段を選んだことは、やられたらやり返すという被告自身の考え方、過去の事件を調べて得た知識などをもとに選択したもので、妄想の影響はほとんど認められない

 さらに、犯行直前に十数分間、現場近くで何度も逡巡したことなどを挙げ、「犯行を思いとどまる能力は『妄想性障害』が動機形成に影響していた点において、多少低下していた疑いは残るものの、著しく低下していなかった」と判断した。