岩をくり抜いた巨大建築群 幻の古代都市 ペトラ

さらに断崖の岩山に隠された都市遺跡も世界遺産になっています。それがヨルダンの「ペトラ」。2000年前、ナバテア王国の都として築かれました。

ペトラは断崖絶壁の岩山に周囲を囲まれていて、その断崖の裂け目の細い一本道が都市に通じていました。

一本道を抜けると現れるのが、断崖を彫って作られた高さ40メートルもある建造物。エル・カズネと呼ばれ、王の墳墓とされています。さらに道をたどると、突如として開けた都市空間が現れます。

番組ではドローンを駆使して撮影したのですが、やはり周囲の岩山を削って、劇場や集団墓地などの巨大建造物が造られていました。この隠された都市には3万人が暮らしたとされます。

ペトラは砂漠地帯にあるのですが、雨を集める水路や貯水層など200を超える水利施設が見つかっています。最近の研究では、噴水や巨大なプールの跡まで発見されており、古代の驚くべき水利技術によって都市の人口が支えられていたことが分かってきました。
山、海、断崖・・・人間はさまざまな地形に合わせて都市を築き、それぞれの環境に合わせて工夫をこらして暮らしてきました。世界遺産の都市遺跡が魅力的なのは、こうした先人の知恵を今に伝えているからなのです。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太