大企業と中小企業の、賃金格差の拡大につながる懸念は?

――大企業と中小企業の賃金の格差は拡大するのではないか。

連合 会長 芳野友子氏:
賃上げを実現していくためには、一部の業種や一部の企業だけが賃上げが実現できるのではなくて、社会全体で賃上げをしていくことが重要。社会全体で労務費を含めた価格転嫁を行う。みんなでやらないと意味がない。

――2024年春闘での「経済社会のステージ転換」という言葉にはどういう意味が?

連合 会長 芳野友子氏:
賃金も物価も経済も好循環で回っていく。安定的に上昇していくということが非常に重要で「経済社会のステージ転換」という言い方をした。

――実質賃金が20か月連続のマイナス。物価の上昇に賃金がいつ追いつくのか。実質3%物価が上がったので、ベア3%じゃないと実際マイナスになる。ベアには注目しているのか。

連合 会長 芳野友子氏:
2023春闘のときに賃金は上がるというマインドになった。2024についても賃金は上がり続けるというふうに変えていきたい。ベアは重要視している。可処分所得も上げていかなければいけないので、ベアでしっかりと賃金を上げていかないと意味がない。(「連合」要求3%以上)を主張していく。

――岸田政権は、「2030年代半ばには最低賃金1500円」と言っている。

連合 会長 芳野友子氏:
連合としては人への投資を継続的にやっていくということと、最低賃金についても連合として方針(2035年までに最低賃金「1600円から1900円程度」)を掲げていて、それを着実にやっていく。日本企業は割と同業種で横並び的に他社を見る傾向があるので、連合としては情報公開をしながら水準を上げていくようにする。

――過去30年賃金が上がらなかったものが、初めて去年上がって、今年は継続させると。連合会長としての歴史的な役割をどういうふうに思っているのか?

連合 会長 芳野友子氏:
私としては、現場主義を徹底したい、現場の声を大切にしたい。なるべく現場の組合員と接しながら、状況を連合運動に反映させたい。それと、労働組合は男性社会なので、トップに女性がついたというのは非常に大きい。国際社会の中でも連合が評価されている部分なので、今までにない視点が入れられるのではないかと思っている。また、加盟組合の女性の皆さんがすごく元気になった。男女間賃金格差などもそうだが、課題を持っている人の方が、より明確で、どうすれば課題解決になるのか皆自分事として考えてくれるので議論も活発化・活性化するし、運動の領域も広がっていくのではないかと思う。

――歴史に残る春闘にできるか、わかれ目だが、意気込みを。

連合 会長 芳野友子氏:
「経済社会のステージ転換の正念場」という位置づけをしているので、2024春闘は、5%以上の目標をしっかりと取っていく。そして中小小規模事業所、非正規雇用労働者の賃金を上げることができるのか、力を入れていきたい。

2023年の賃上げ率は30年ぶりの高水準。3.58%。連合は2024年の要求を5%以上としている。その要求に対してどれくらいできるのか。東京商工リサーチが先月4500社余りにアンケートした2024年の賃上げ動向。企業の8割が賃上げを実施する予定だが、賃上げ幅が去年を超えそうと回答した企業は1割にとどまった。

――大企業からは、高い数字が出てきているが。

明星大学経営学部 細川昌彦教授:
潮目が変わってきている。週明けの1月22日に政労使会議が開かれる。雰囲気は相当違うと思う。経団連も春闘の方針が「ベースアップも有力な選択肢」と画期的。ベースアップをあれだけ嫌っていた使用者側が積極的になっている。それから、大企業だけでなく下請けに対しても行動変容をしなければいけないと。経営者だけでなく、担当の調達が、行動を変えないと駄目だと経団連自ら言っている。

――大企業の従業員も意識しないといけないと、経団連も言っていると。

明星大学経営学部 細川昌彦教授:
政府も相当変化していると思うのは、公正取引委員会が労務費の転嫁、価格交渉の行動指針を出した。公正取引委員会も目をつけてるぞというプレッシャー。それから先日、中小企業庁もこの価格交渉・価格転嫁に後ろ向きの企業名まで公表した。これは画期的なことで、相当いろんなところから大企業にプレッシャーが向けられているという中での政労使会議。相当変化していると思います。

――上げてくださいというだけでは、なかなか続かない。何が必要か。

明星大学経営学部 細川昌彦教授:
中小企業の生産性が上がっていき、企業がそこに投資をして、成長していく、これがベースにないと継続的に賃上げは難しい。政府も必要だといって省力化投資に1000億の予算を補正予算で用意した。中小企業庁が、こういう手で省力化投資どんどんやっていこうと。それで成長性・生産性を上げることが、これからの鍵になってくると思います。

(BS-TBS『Bizスクエア』 1月20日放送より)