難病患者の就労には事業者の理解が必要

さて、こうした困りごとの多い難病や、国の難病指定はされてないものの慢性化した治りにくい疾患の治療をしながら暮らす人を支援する任意団体があります

元々、神奈川県のハローワークで看護師として難病患者就職サポーターをしていた中金竜次さんが、2019年に始めた「就労支援ネットワークONE」です。中金さんがこれまで行ってきたたくさんの患者の就労相談を、民間での活動として、全国を対象にした形でオンラインなどで個別相談に応じたり、顕在化していない課題を探る調査などをしています。中金さんは、難病患者が例えば鳥居さんのように治療しながら働く際に必要なのは「事業者側の理解」で、今はそれを促すことが重要であると話します。

就労支援ネットワークONE 中金竜次さん
「通院のための休暇がある会社もあれば無い会社もあって、有給休暇を消化してしまって会社で働いている方々も皆さん悩みどころだったりとか、誰に相談したら?っていう方もいまだにいらっしゃるので、多分、事業者側へのアプローチっていうのが今まだ少ないんですよね。僕が神奈川で事業者の方に難病の方の雇用・就業の事例とかを共有したら、アンケートに『興味を持ちました。雇用を考えたいと思います。ただ、ちょっと制度や仕組みのことがわかりません』と。だから、こちら側が十分発信しきれてないんですよね」

中金さんは、見た目にはわかりにくい体の中の痛みやしびれ、吐き気などの内部障害の職場での理解の仕方も含めて、これから共有していきたいと考えているところだそうです。また難病の当事者の鳥居さんは、治療をしながら仕事をするための情報を受け取りやすい社会というのも必要だと話していました。わたしたちが、見た目ではわからない難病を抱えた人たちが実は身近に多くいることをまずは知って理解し、その治療に加えて就労も両立できることが当たり前となる社会になることを願います。

(TBSラジオ「人権TODAY」担当・TBSラジオキャスター 加藤奈央)