安倍元総理が銃撃され死亡した事件。当日の警備態勢を検証すると“空白の5秒間”の存在が浮き彫りとなりました。

■背後から近寄り銃撃「狙って撃った」

白昼堂々と行われた今回の凶行。襲撃を防ぐことはできなかったのでしょうか。安倍氏が応援演説を行った陣営の選挙カーには弾痕らしき穴がふたつ確認できます。山上容疑者が発砲した流れ弾が当たった可能性があります。


銃撃現場を俯瞰すると選挙カーは山上容疑者が発砲した方向の延長線上に停まっていました。その距離は約25m。


安倍元総理は横断歩道すぐ横のガードレールに囲まれた場所で演説をしていました。周囲は360度開けていることがわかります。

山上容疑者は背後から近寄り銃撃。「安倍元総理を狙って撃った」と供述しています。

■警視庁OBが厳しく批判 警備上の深刻な問題点

今回、捜査関係者への取材で山上容疑者の詳細な動きが判明。そこから、警備上の深刻な問題点が明らかになりました。

事件当日の午前11時30分ごろ、山上容疑者は駅前のロータリーを出て左右を確認することなく、車道を横断し始めます。警視庁のSPや奈良県警の警察官は主に前を向いていたため、安倍元総理の背後は、“ノーマーク”の状態でした。

この状況を、要人警護の経験がある警視庁OBは厳しく批判します。

警視庁特殊部隊(SAT)元隊員 伊藤鋼一氏
「背後を警備していないのはありえないことだと思います」


その後、山上容疑者は手製の銃を鞄から取り出し、車道のセンターラインを超えたあたりで立ち止まります。そして、約6メートル先の安倍元総理の方向に照準をあわせます。山上容疑者が車道に出て、発砲するまでの時間は5秒間。SPらが動きに気づいていれば、悲劇を防げた"空白の5秒間"でした。

1回目の発砲は安倍元総理に命中しませんでしたが、SPらは即座に山上容疑者を制圧できませんでした。

SAT元隊員 伊藤氏
「安倍元総理に覆い被さるっていうのはやっぱり必要になってくる」

警視庁が公開した要人警護の訓練の映像を見ると、異変を察知した場合、SPは瞬間的に要人を体でかばっています。


しかし、安倍元総理が撃たれた際の、1発目の発射前の映像を見てみると、安倍元総理に背を向けて後ろ側を警備している男性は、左側を見ていて、山上容疑者の接近に気づいていません。


1発目発射後、容疑者に気づいて身を乗り出しますが、この直後、2発目が発射されます。


山上容疑者は1発目の発砲後、さらに3歩前進。今度は約3メートルの至近距離から2発目を発砲し、命中させたのです。直後に山上容疑者は地面に押し付けられ制圧されましたが、安倍元総理はすでに凶弾に倒れていました。

SAT元隊員 伊藤氏
「制服の警察官も立っていませんしパトカーもいません。見える警備をほとんどやっていなかった」