発想の転換でヒット商品に。ホテル1泊300万円に問い合わせ相次ぐ

――「限界突破、超・能力」が23年のキーワードだと。

日本経済新聞社 中村直文氏:
コロナで非常にデジタル化が進んで、いろいろな楽しみ方が増えてきました。なかなか顧客は買ってくれないという中で、今までのレベルを超えたものを作っていかないと売れなくなってきた。それが今年、いくつか出てきたということで、まず限界突破ということです。

これまでの能力や消費の土俵を超えたヒットの現場を取材した。

伊藤園では23年9月に放映した「お~いお茶 カテキン緑茶」のCMに生成AIを活用した。人工知能というまさに「超・身体」。AIを活用した狙いは?

伊藤園 広報宣伝部 上條裕介氏:
コンセプトをピンポイントでタレント像として描くことができる。

一方で、AIの能力を超えたと話題になったのが、23年10月に21歳2か月という若さで前人未到の8冠を成し遂げた藤井聡太八冠だ。80万円の特別観戦プランが即完売するなど、経済効果は35億円に及ぶと言われている。

街にはコロナ明けと32年ぶりの円安から、「超・金額」、超高額な消費に走る外国人観光客があふれた。

消費意欲旺盛な外国人観光客をターゲットに高級ホテルが次々とオープンした。5月、東急歌舞伎町タワーの上層階に開業し話題となった「BELLUSTAR TOKYO」の47階にある277平米の最も高級な部屋は、リビングとダイニングの他にプライベートSPAを併設している。1泊316万2500円と超高額だが、予約の問い合わせが相次いでいるという。

23年のヒット商品には「超・土俵」、消費の土俵やターゲットを広げた商品が目立った。パナソニックが9月に発売したひげ剃り「ラムダッシュパームイン」は持ち手がなく、既成概念を超えた。市場価格は4万2000円程度と高額だが、出張が多いビジネスマンに受けて販売計画をわずか3か月で10倍上回るヒット商品となった。

昔の人気商品を進化させて、再びヒットさせたものもある。その代表が「たまごっちユニ」だ。「たまごっち」は1996年に登場し、ご飯やおやつを与えて遊び相手になったりすることで、ペットのようにキャラクターが成長するとあって、女子中高生を中心に大ヒットした。そのたまごっちが27年後、Wi-Fiを搭載。世界中のユーザーが育てたたまごっちと、メタバース空間でデートや旅行をすることができる。8か国語に対応したことで、海外でも人気となった。

世代の土俵を超えてヒットしたのが、コマをぶつけ合って対戦するおもちゃの最新版「ベイブレードエックス」だ。1999年に発売開始した「ベイブレード」が7月、8年ぶりに進化して登場した。コンセプトは「もう遊びじゃない」。前の世代からコマのスピードを20%を上げてスポーツ性を高め、スマートフォンのアプリと連動して、自分のシュートの速さを計測・記録できるようDX化も実現した。

――「超・土俵」はボーダレスということか。

日本経済新聞社 中村直文氏:
既存のものの用途を変えるとか新しい付加価値をつけることによって作り直す。発想の転換があるわけです。成熟社会は全てリニューアル、リモデルを中心に動いてきたということです。

24年のヒット商品のキーワードは「RE型(回帰型)」、「世代超え・消齢化」、「シン観光経済」だ。

――コロナの時代に結構モノ商品をして必要なものはそろっている。それを超えたモノあるいはコトに消費が向かう年になりそうだということか。

日本経済新聞社 中村直文氏:
もうモノはあまり期待できません。コトによって付加価値を上げた経済が経済力を強めていくのではないかなという気もしています。

(BS-TBS『Bizスクエア』12月23日放送より)