消費流通マーケティングの専門誌「日経MJ」が発表した2023年のヒット商品番付。

東の横綱が「生成AI」、西が「大谷翔平&WBC」。「阪神の優勝」や「日本バスケ旋風」などスポーツなどイベントに絡むものが今年も上位に。ひげ剃りやリップなどマスク生活から脱したという側面も見てとれる。番付から見えてくる消費トレンドを探る。

大谷効果で美容液売上4割増。外出需要増でイベントやスキンケア商品も

うどんと具材をシェイクする新しいうどんの食べ方で注目された「丸亀シェイクうどん」。5月の販売から半年で約500万食を販売した。

「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」はこれまでのビールよりもアルコール度数を下げて消費者のニーズを捉え人気になった。

主食とおかずを1皿にまとめた冷凍食品はマーケティング会社インテージによると、ワンプレート冷食の2023年1月から10月の販売金額は前年同期比で44%増の72億円と市場が拡大している。

2年連続でランクインしたのが、月額2980円でジムを利用できる「chocoZAP」。セルフエステや脱毛に加え、9月から歯のホワイトニングやセルフネイルなど新サービスが始まり、利用者層の幅が拡大。サービス開始から約1年で会員数100万人を超え、フィットネスジム日本一に駆け上がった。

ゲーム「ゼルダの伝説」シリーズ最新作は広大な世界を自由に散策できる自由度の高さが人気につながり、発売から3日間で世界累計販売は1000万本を突破した。

23年5月にコロナが5類に移行し、外出需要を狙った商品やイベント、スポーツなど、リアルな場所での消費が賑わいを見せた。

西の横綱に選ばれたのは「大谷翔平&WBC」。今シーズン日本人初のホームラン王、2度目のメジャーMVPを獲得した大谷翔平選手。12月10日、ドジャースとの契約を発表し、10年総額約1015億円の契約金が話題になった。

コーセーは広告に大谷選手を起用後、美容液が86万個売れ、売上は前年比で4割増加した。

コロナが明けてマスク生活も終わり、外出需要が増える中でのヒット商品も続々と登場した。

23年9月に開業した「Kアリーナ横浜」は、音楽に特化したアリーナでは世界最大級。約200か所にスピーカーを設置し、VIP専用ラウンジなども設けた。

粘膜リップは唇の裏の粘膜の色を再現し、自然な血色感が出ると人気に。外出機会が増え、これまでマスクで隠れていた鼻から下のパーツをケアする商品のヒットが相次いだ。

――コロナが明けてスポーツイベント、リアルの世界にというのが23年のトレンドか。

日本経済新聞社 編集委員兼論説委員 中村直文氏:
収まっていった人流が一気に広がったということで、各地で人が出てアミューズメント系は盛り上がったということです。

――ヒット商品と言いながらモノはあまりなく、事象やイベントが多いというのはヒット商品番付も行き詰まってきた?

日本経済新聞社 中村直文氏:
その発想は昭和型です。モノはほとんど普及しきって、今は人々の悩みごととか不安とかが増えていく。そこに対応した商品が増えていくのが今のヒット番付の流れということです。そういった意味で今年は非常に歴史的なインパクトがあったのではないかと個人的に思っています。

――新しい芽のようなものが出てきている?

日本経済新聞社 中村直文氏:
生成AIもそうですし、ビジネスのあり方を今後変えそうな予感をさせるものが増えてきたなということもありますし、今までは思い込みがあったものを突破していくようなものが出てきたなという気はしています。