ニューイヤー駅伝(第68回全日本実業団対抗駅伝)は24年1月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間100kmのコースに41チームが参加して行われる。8月の世界陸上ブダペスト10000m代表だった田澤廉(23)が加入したトヨタ自動車、前回優勝のHonda、東日本予選優勝の富士通が3強と目される。どのチームも日本代表経験選手を複数人擁し、熾烈な戦いが展開されそうだ。
また全行程と区間数に変更はないが、中継所の変更で2、3、4区の距離が大きく変わった。最長区間は2区(21.9km)に、外国人選手が出走できるインターナショナル区間は4区(7.8km)になった。レース展開にどんな影響が出るのだろうか。
トヨタ自動車は太田と田澤のダブルエースでトップに立つか
前回3位のトヨタ自動車は3区区間賞の太田智樹(26)が、12月の日本選手権10000mで2位。従来の日本記録を上回る27分12秒53をマークした。田澤は日本選手権4位(27分22秒31)。トヨタ自動車のダブルエースは他チームの脅威となる。
太田は自身に求められている役割として「田澤と自分でどれだけリードできるか」と自覚する。熊本剛監督は2区と3区を太田、田澤、前回4区(当時最長区間)の西山雄介(29)の3人から、状態を見て起用するという。西山は22年世界陸上マラソン13位の実績がある。
1区は田中秀幸(33)が、5区は服部勇馬(30)が区間賞候補に挙げられる。田中は1500mで3分30秒台のスピードがあり、中部予選3区区間賞。向かい風にも強く、15&16年の2連勝時に連続区間賞を取った6区出場の可能性もある。服部は21年の東京五輪マラソン代表だったが、ニューイヤー駅伝では前回7区区間賞。5区でも19年、21年と2回区間賞を取っている。
そして大ベテランの大石港与(35)が健在だ。10月のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)を走っただけでなく、11月の中部実業団対抗駅伝7区区間賞、12月の日本選手権10000mと連戦した。
2区と3区のダブルエースでリードを奪って逃げ切る展開がベストだが、5区以降で逆転するシナリオも十分実行できる。
「前半からトップに近い位置を走り続けることが重要です。その流れに乗って行くなかで、どこかで勝負を仕掛けたい」(熊本剛監督)
トヨタ自動車が8年ぶりのV奪還に大きく近づいている。
Hondaは5、6区で、富士通は10000m日本新の塩尻でトップに立つ展開か
2連勝中のHondaと、東日本予選4連覇の富士通も、トヨタ自動車と同じように代表経験選手を複数擁し、選手層の厚さは引けを取らない。
Hondaは小山直城(27)がMGCに優勝し、パリ五輪マラソン代表に選ばれた。チームにも勢いが付いた印象がある。前回も最長区間(4区)で小山がトップに立ち、5区の青木涼真(26)の区間賞、6区の中山顕(26)の区間2位で勝負を付けた。
懸念材料は伊藤達彦(25)が日本選手権10000mで、28分32秒85の16位と振るわなかったこと。前回も伊藤抜きで優勝を果たしたが、小山の2区、東京五輪、22年世界陸上と10000mの連続代表だった伊藤が3区に入ることが理想だろう。伊藤の状態が上がらなければ、伊藤を1区に回して前回1区区間2位の小袖英人(25)に3区を任せるか。小袖も5000mで13分23秒94と日本トップレベルのスピードを持つ。東日本予選1区区間3位(区間1位と3秒差)の森凪也(24)も、状態が良ければ1区を任せられる。
Hondaの一番の強みは5、6区で、30秒程度のビハインドなら逆転できること。青木は今年の世界陸上ブダペスト3000m障害で初めて決勝に進出。5区では前々回区間2位、前回区間賞。中山は前々回の6区で区間賞、2人を抜いてトップに立った。
4区までの選手は自分たちでトップに立たなくとも、ある程度の差でタスキをつなげばいい。青木&中山が後ろにいることで安心して走ることができる。2人が3年連続で5、6区なら、3連勝が可能な布陣といえる。
富士通の強みはエース区間で、塩尻和也(27)にかなりの確率で区間賞が期待できること。今季5000m、10000mで日本選手に負けたのはアジア選手権ただ一度。その流れで12月の日本選手権に臨み、27分09秒80の日本記録を樹立した。塩尻自身は2区よりも3区を希望しており、塩尻が3区なら横手健(30)が2区候補だという。横手は前回4区区間4位。1年前と同じ走りが2区でできれば、3区の塩尻で抜け出すことができる。
5000mの東京五輪代表コンビの松枝博輝(30)と坂東悠汰(27)が、東日本予選では1区区間10位と3区区間8位。前回のニューイヤー駅伝も松枝が欠場し、坂東が3区区間16位。駅伝では近年不調が続くが、松枝は21年大会1区区間賞。坂東も東日本予選で区間賞を取ったことがある。2人のどちらかが1区で区間賞争いができれば、3区の塩尻でトップに立つ可能性がふくらむ。
マラソン日本記録保持者の鈴木健吾(28)はエントリーしなかったが、東京五輪代表だった中村匠吾(31)はトラックで復調の兆しを見せている。3年前の優勝時に4区でトップに立った中村が復活すれば、富士通の優勝へのピースが埋まっていく。