自動車メーカーのマツダは2023年9月、量産を終了していたロータリーエンジンを11年ぶりに復活させた。今回の復活はPHV、プラグインハイブリッド車にロータリーエンジンを発電専用に搭載しようという試みだ。その狙いと今後の可能性について、マツダの毛籠勝弘社長に聞いた。

ロータリーエンジンは「会社のアイデンティティ」 発電機として復活

11月16日に発売した「MX-30 Rotary-EV」は世界で初めてマツダが量産化を成功させた独自技術「ロータリーエンジン」を搭載している。ピストンが往復する通常のエンジンとは違って、おにぎり型のローターが回転し、大きさは通常の約82%とコンパクトであるにもかかわらず、出力が高いのが特徴だ。

1967年、初めてコスモスポーツに搭載。ロータリーエンジンの名を世界に広めたRX-7を始め、累計199万台を超える車に搭載されたが、燃費が悪いことや排ガス規制の対応が難しく、RX-8を最後に2012年に生産は終了。そこから11年、ロータリーエンジンが動力としてのエンジンではなく、発電機として復活。その狙いは一体どこにあるのだろうか?

――マツダのシンボルというとロータリーエンジンだ。今回ロータリーエンジンを搭載した車を11年ぶりに復活させた。どういう狙いで作られた車なのか。

マツダ 毛籠勝弘社長:
この電動化時代に電動化デバイスと組み合わせるとロータリーの良さが引き出せるということで、今回、電動化デバイスと組み合わせてロータリーエンジンを発電機として市場に投入しようと。

――なぜロータリーエンジンを止めなかったのか。

マツダ 毛籠勝弘社長:
一番重要なのは会社のアイデンティティみたいなところだと思います。我々のビジネス以上に心の精神的な大事な宝物のような存在であるということです。ビジネスには直接つながらないかもしれないけど、この技術だけはちゃんと開発をコツコツ続けていくんだ、時代に合わせて進化させるんだという思いで、エンジニアはやってきてくれたと思います。

11月末時点で760台売れているというMX-30 Rotary-EV。発電用ロータリーエンジンは830CC、最高出力125kWの高出力モーターを搭載している。航続距離はバッテリーだけで107キロを走行。ガソリンで発電することで、計算上800キロ以上走ることができる。価格は423万5000円からだ。購入客のほとんどはEVに興味はあるが、EVだと航続距離に不安がある人だという。

――車を動かす動力ではなく発電機としてロータリーエンジンを搭載している。なぜそういう使い方をしているのか。

マツダ 毛籠勝弘社長:
発電機として一つのユニット、ソリューションとして1回作ってしまおうと。そうすると将来、カーボンニュートラル燃料とかが出てきたときにロータリーエンジンに使う燃料として使えば、システム全体がカーボンフリーになるという狙いがあって、ロータリーエンジンを発電機としてまずは使ってみようとなりました。

――水素などを想定しているのか。

マツダ 毛籠勝弘社長:
水素、ナチュラルガスから作った燃料、合成燃料、LNGもあると。いろいろなものを食べられる汎用性、雑食性がロータリーエンジンの特徴です。

――将来的には水素で動くような車を作るというオプションもあるということか。

マツダ 毛籠勝弘社長:
技術の拡張性としては、将来水素のインフラストラクチャーができて、入手容易性が高まってコストがこなれてくれば、当然ロータリーエンジンの新たな出番もあると期待をしています。

――業界では三菱自動車の中国撤退が話題になったが、傷が大きくならないうちに将来的にはやめてしまうオプションは今あるか。

マツダ 毛籠勝弘社長:
今は、撤退という選択肢は0%。ただ、中国という国は政治的リスクもあるので、常々柔軟に見ていくということが必要になります。今は我々が立てたプランをしっかりと実行していくということにフォーカスを当てたいと思います。

――中国では苦戦していると聞いたが、今後挽回できそうか。

マツダ 毛籠勝弘社長:
社長就任翌日に中国に行って、現地のパートナーといろいろと話をして、4日間ずっとつぶさに市場を見てきたのですが、相当変わっていました。全く認識を改めていかないといけないと。

――どう変わっていたのか。

マツダ 毛籠勝弘社長:
電動化の進捗が日本が想定している4倍速ぐらいで進んでいる。官民一体となって進めているなという印象です。中国という市場に関しては電動化はおそらく半分以上になるまで一直線に進むだろうと。市場でブランドを挽回していくためには電動車がいるという話です。