冬の風物詩、伝統の島野菜で栄養価も高く、古くから「チムシンジ」といった薬膳料理としても重宝されてきた「島にんじん」。通常のニンジンと異なり、黄色く細長い島にんじん。その生産量の7割を占める県内一の産地、中城村では在来の島にんじんを守ろうという取り組みが広がっています。
「自家採種」で守り続けられてきた島にんじん

沖縄の冬の伝統野菜「島にんじん」。年間でおよそ40トン。7割近い生産を誇る県内一の産地の中城村ではおよそ40の農家が収穫の時期を迎えています。
20年ほど前から島にんじんを育てている、農家の安里雄徳さん。幼い頃から、親しみのある野菜でしたが、育て方は、一般的なにんじんと比べ、重労働だといいます。
島にんじん農家 安里雄徳さん
「この状態だと、にんじんの周りにしっかり土がつかんでいるので、抜こうとすると葉っぱから切れちゃう」
長い島にんじんが折れないよう、専用のクワを使って、1本1本、丁寧に抜いていきます。

なぜ、中城村でこれほど島にんじんの栽培が盛んなのか?それは、古くからの土地と水の豊かさが今も残っていること、さらに海岸に近い中城の土壌は、砂が混ざり柔らかく、地中に深く根を伸ばす、島にんじんの栽培に適しているとしています。
島にんじん農家 安里雄徳さん
「これが来年の4月か5月ごろに白い花が咲いて、種になります。業者から種を買って使っているのではなく、良い種を毎年毎年残すようにしています。昔からこのやり方です」

実は島にんじんの栽培は、いくつか花を咲かせ種を自分で取る「自家採種」、このやり方をずっと守ってきました。
村と農家が協力し、貴重な種を保存、継承していくために取り組んでいます。
中城村産業振興課 山下大作さん
「1回無くなったものを復活するのはほぼ不可能に近いので、淘汰される前に種子を残しておくという取り組みが1番重要になってくる」
専門家は、こうした在来の野菜の重要性をこう話します。
沖縄美ら島財団 砂川春樹博士
「今でも、先祖から受け継いできたものを大切にしっかり花を咲かせて種を取って、そこからまいているという点が、非常に重要で貴重な地域だと思う」