工事間に合う?「もうデッドラインは過ぎている」

工事の遅れについても懸念されている。建設業界からは厳しい見方が示された。

日本建設業連合会 宮本洋一会長
「一般論で言えば、もうデッドラインは過ぎていると思ってもいいくらい」

予定地には木製リングの一部が建ち始めているものの、すでに着工しているパビリオンは一部のみで、まだ手付かずの更地が多いことがうかがえる。特に独自のデザインで建てる海外パビリオンはまだ全く着工していない。資材の高騰などで建設業者との契約が難航しているという。

工期が限られている中で、来年度からは建設業界の時間外労働が法律で制限され、月に45時間を超える残業が原則できなくなる。

そんな中、自民党の部会では「非常事態であるから、残業時間規制についても必要であれば柔軟に対応できないか考えるべき」と規制の対象外にすることも考慮すべきとの声が出たという。

関西の建設業界の労働組合は懸念を示す声明文を公表した。

全京都建築労働組合 酒井仁巳 副執行委員長
「労働安全の問題はすごく心配、どうしても余裕がなくなりますから。東京五輪で過労自死など重大災害で計4人の方が亡くなっている。そういう悲劇を繰り返してはいけない」

建設業界は悲劇を繰り返さないという思いで働き方改革を進めてきた。現場の努力とは逆行するような政治家の意見にこう憤る。

全国建設労働組合総連合 平山幸雄 副中央執行委員長
「『怪我と弁当は手前持ち』という言葉に代表されるように、全て自己責任でやってきたからこそ、本当に若い人がいない事態になってきた。やはり危機感がある」

全京都建築労働組合 酒井仁巳 副執行委員長
「建設労働者の命と健康を第一にしてもらわないと困る。それが危うくなる形で進められるのであれば、もう中止すべき、もしくは延期」

実際、万博の工事に携わる人たちは何を思うのか。工事を請け負う事業主と今現場で働く作業員に話を聞くことができた。

現役作業員
「一番大きい現場だと思っている。それに入れるのはかなり嬉しい」

その一方で…

現役作業員
「(完成の)イメージ図を見せてもらって、こんな感じですって言って。あと500日、1年半で本当に建つのか?今までホテルなどの建築にも入ったが、それでも2年半かかった」

Q.規模はホテルの方が大きい?

現役作業員
「万博、圧倒的に。土日祝やらないと無理だろうなと」

時間外労働が容認される可能性について聞いてみると。

現役作業員
「嫌だと思う、やっぱり残業は。特に家庭のある人、僕も嫌。もっと人を入れるべきだと思う、お金を出して」

一方で工事を請け負う事業主は、仮に工事の予算が上乗せされても作業員の確保につながる見込みは低いと考えている。

事業主(2次請け)
「元請け・1次・2次・3次・4次といっぱいある中で、そこまでお金が絶対回らない。予算を上げたところで結局、労働者にお金が還元されないという別問題も出て、人はまず集まらないと思う」

万博の工事で入る賃金「労務単価」は“他の現場の平均より低いくらい”だという。

事業主(2次請け)
「もう、日を延ばす。一択。お金を増やすとか単価を上げるとか、そんなんじゃなくて。そんなことしてもメリットない作業員が多いと思う」

延期を求める声について万博協会は取材に対し、「日本としてしっかりと約束を果たし、大阪・関西万博を誘致して良かった、やってよかったといえるようにしたい」と回答している。

万博成功のためには何が必要か。