丁寧なヒアリングで浮かび上がること
「リハデイnoie」の利用者にお話を伺っています。いずれも80代の川手三枝(かわて・みつえ)さん、野村郁子 (のむら・いくこ)さんです。
川手三枝さん
「食事の支度とか、あとはお掃除とか家庭でやること、ほとんどそういうことですね。何人かでお味噌汁作ったりとか、この頃家で何もできないんで、娘がみんなやってくれるんで、何もしてないんです。皆でやれば楽しいですね」
野村郁子さん
「私はもうホントにここに来ている時間が楽しいです。帰ればマンションに1人ですから。だからここに来て何かさせていただければ、片付けでも何でも」
通常デイサービスと言えば、集団で何かレクリエーションをやったりということが多いのですが、「リハデイnoie」では、「それはホントに全員でやりたいことなのか?」という考え方から、個々の利用者に必ずインタビューやヒアリングを行います。その場合「やりたいことは?」と尋ねても、みなさん大抵は「ない」と答えるそうです。でも本当は深層心理で「何か役に立ちたい」という気持ちが強い方が多いんです。
そこで昔のこと、それこそ幼少期から結婚・子育て・仕事の苦労など遡って詳しく尋ねていくと、 ホントに好きでやっていたことが浮かび上がります。逆にホントはやりたくないこと、嫌いなことなどもわかってきます。デイサービスのお迎えとかお見送り、作業しながら話を聞いていく中で、更に詳しいことがわかる場合もあります。それにプラスして、個々の身体の特徴、認知機能など評価して、できることをやってもらうわけです。

「リハデイnoie」の経営者は元々、リハビリ系の資格を持つ理学療法士なのですが、リハビリしている高齢者が、病院ではできることが、家に帰って環境が変わると「できなくなる」ケースに多く当たってきたと言います。だったら自分たちが運営するデイサービスでは、その人たちが出来ること、やりたいことにチャレンジできるスタイルが良いのではと思ったわけです。家事をやってもらうデイサービスは元々存在したそうで、それを一軒家を利用してやるともっと良いのではと考え、「リハデイnoie」を開所しました。この「noie」という名前には、利用者の方々みんなの家という意味も籠められているんです。

家事で自信を付けた利用者は…
利用者に家事をやってもらうことで、こんな効果が見られると言います。
「リハデイnoie」管理者の後藤弘幸さん
「認知症の症状が出てきて、ご自分でもやっぱり出来なくなっていることがわかっていたりすると、自信がなくなって表に出なくなる方が増えてくるんですけど、そういう方がnoieでの通所を通して自信をつけてちょっと表に出ることができるようになったとか今までやっていた日課をまたやれるようになったって話を聞いてはおりますね」
後藤さんたちは、一軒家の中だけではなく、外に踏み出した活動も考えています。
「リハデイnoie」管理者の後藤弘幸さん
「やっていきたいと思っているのは一つ、地域との接点を作っていきたいというのがあって、最近はこの小岩地区の商店街に花壇を借りて、そこの植え付けとか水やりとかの管理を頼まれてて、そういう活動もやってみたりとか。今後施設内でできるような内職みたいな活動も取り入れていこうと思っています」
「リハデイnoie」の評判は広がり、自治体やデイサービスなど介護施設を経営している会社などから見学も多く来るようになっています。こうした運営は、利用者からの聞き取りも含めて、各職員の経験やスキルに負うところが大きいので、マニュアル化はなかなか難しいのですが、追い追いそうした取り組みも行っていきたいと考えているといいます
(TBSラジオ「人権TODAY」担当・松崎まこと 放送作家/映画活動家)