養子として迎えた子どもと夫婦が実の親子関係を結べる「特別養子縁組制度」運用開始から35年が過ぎましたが、ある一人の女性の告白から制度創設の影の一面が浮き彫りとなりました。自分が「養子」であることを近所の“うわさ”で知った女性。関係者しか知らないはずの事実をなぜ近所の人は知っていたのか。女性が「真相」を話してくれました。前編、近所のうわさで知った出自 女性が探す「自分の生い立ち」の後編です。

近所のうわさで「自分が養子」だと知る

石巻市に住む佐藤晃子さんは、40年以上前に市内の菊田産婦人科医院(現在は閉院)で生まれました。

院長の菊田昇医師(1926年~1991年)は、養子として迎えた子どもと夫婦が実の親子関係となれる「特別養子縁組制度」(1988年~)創設のきっかけをつくった人で、まだ制度がない頃に200人以上の赤ちゃんをあっせんしていたと言われています。

佐藤さんはそのうちの1人で去年、近所の“うわさ”で自分が「養子」だったと知りました。

菊田医師は当時、周りに知られないように赤ちゃんを、子どもを望む夫婦に託していたといいます。本来なら両親や関係者しか知り得ない事実をなぜ近所の人は知っていたのでしょうか。

近所の人が知った理由

当時、佐藤さんの母親が、赤ちゃんだった佐藤さんを迎えに行くときに使った「タクシー」が原因だったと言います。