佐藤さんが見せてくれたのは、自分の戸籍謄本です。そこには「養女」ではなく「長女」と記載されていました。

佐藤晃子さん:
「本来は養女と記載されますが、菊田先生が偽造の書類をつくって提出したので“長女”と記載されたと思われます」

菊田医師は、制度がなかった当時、養子として迎えた子どもと夫婦が実の親子となるよう、偽の出生証明書を作成していました。明らかな違法行為でしたが、菊田医師は「赤ちゃんの命を守るためには形式的に法を犯さざるを得ない」などと説明していました。

違法行為に手を染めてまで赤ちゃんの命を救おうとした菊田医師の行為に対し、今は称賛の声が多く聞かれます。しかし、出生証明書の偽造によって、生い立ちを調べる手段が永遠に閉ざされてしまったのです。

佐藤晃子さん:
「産んだ人の秘密を守る、なのでその人(産みの母)の情報は教えない、残さないと(記事に)書いてあった気がしますが、生まれた子どもが親を知る権利とか出自を知る権利が奪われているので、それが一番問題だと思っています。自分が養子だと知ってびっくりはしませんでしたが、疑問がたくさんあることにもやもやして、ストレスを感じています。菊田産婦人科医院で働いていた方や生まれた方からもお話を聞いてみたいと思っています」

後編では…。佐藤さんは、近所の“うわさ”によって自分が「養子」だと知りました。菊田医師は、周りに知られないよう赤ちゃんを、子どもを望む夫婦に託していて、本来であれば関係者以外は事情を知らないはずです。それなのに、なぜ近所の人は佐藤さんが養子だと知っていたのでしょうか。佐藤さんが真相を話してくれました。