ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐって、TBSはきょう、第三者の弁護士が加わった特別調査委員会による報告書を公表しました。
報告書は第三者の弁護士2名を外部委員として加えた、TBSの特別調査委員会が作成しました。
週刊文春の報道をめぐる裁判でジャニー氏による性加害の事実を認めた、2004年の最高裁決定などを報じなかったことについては、人権意識の希薄さや週刊誌報道の軽視があったとしました。その一方で、主体的に社会問題や不正を探し出す「調査報道」ではなく、記者クラブで捜査機関などの動向を追いかける日本のジャーナリズムのあり方も問題が放置された遠因ではないかと指摘しました。
今年3月のBBCによる報道の後の対応については、TBSテレビが、性加害問題を初めて報じたのはカウアン・オカモト氏が行った記者会見から一週間以上が経ってからだったと指摘しました。この点について、報告書は「若手・中堅の記者たちから早く取材に動くべきだという声があったが、報道幹部には逡巡するような動きがあった。ジャニーズ事務所と向き合う編成や制作の業務に影響するのではという懸念から配慮が働いたと考えるほかない」としました。
性加害以外の報道についても、次のように検証しています。
2009年。逮捕されたタレントが釈放された際、警察署を出た車が報道陣に追跡される中、TBS放送センターの地下駐車場に入りました。報道局員が地下駐車場へ急行したところ、複数の編成局員に「撮るな」と制止されましたが、振り切って撮影を続け、映像を放送しました。
報告書は「車両を招き入れたのは編成局員で取材の妨害であり、報道機関としての責務を放棄させうる行為だった」としています。
2012年には、ジャニー喜多川氏による追突事故のニュースが放送直前に取りやめになっていました。
「ニュース性がないと判断した」と説明した報道幹部がいた一方で、次のような証言がありました。
報道局員
「編成局員がやってきて『今日はまずい、ジャニーズ事務所に謝りに行かなくてはならない事案がある』と言った」
編成局員は「まったく記憶にない」と話していますが、報告書は「特別な配慮があった可能性は否定できない」としています。
編成・制作部門では次のような証言がありました。
編成局と制作局を経験した社員
「ジャニーズ内の派閥対立に巻き込まれて、忖度したり、圧力を感じてきた歴史だった。右往左往する先輩たちを多く見てきた」
報告書は事務所内の派閥対立がTBSの編成・制作現場に多大な影響を与えたことは否めないとしています。
調査の過程で、元ジャニーズ・ジュニアの男性から「TBSで性加害に遭った」という新たな証言もありました。
男性は、1983年、当時のTBSホールで行われた、事務所の非公開のオーディションに参加。ジャニー氏の横に座らされ体を触られたということです。
しかし、今回の調査で、当時を知る関係者を見つけることはできませんでした。
外部委員の弁護士からは、ニュース編集権の独立性の確保や調査報道の強化、エンタテインメント業界への働きかけなど再発防止のための9つの提言が示されました。
放送と倫理に詳しい、上智大学の音好宏教授は重要なのは再発防止の提言をきちんと実行することだと話します。
上智大文学部新聞学科 音 好宏教授
「編集権の独立を明確にしておくことが、再発防止につながると報告書は語っている。それはすごく大事なことだと思う。調査報道の重要性をうたっているところも、非常に大事な指摘だ。ここが出発点と言うことができる」
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